ちろる

その夜の妻のちろるのレビュー・感想・評価

その夜の妻(1930年製作の映画)
3.7
サイレント音楽なし活弁なしバージョンは毎度観るのが結構疲れるけど、こちらは結構今まで観てきたサイレントの中では見応えがある。
まるでスパイ映画のような、緊張感あふれるオープニング。
小津作品ではあまり見られない洋画風なセット、ファッションで仕上げられ、まるでフイルムノワールのような退廃的な雰囲気。
鋭い眼光のピストルを持ったこの男がただの貧しい家の一家の主であると知るのはちょっと後。
追い詰められた男の逃亡劇がしばらく描かれたあとは、メインは妻。
八雲理恵子さん演じる優しい母としての母性と強さの二面性がストーリーに勢いを持たせてくる。
クールな洋画風な雰囲気からもふたを開ければ安心感のある人情ものがたり。
こういう人情派の刑事はもうこの日本にはいないのだろうなぁー。
昔の良き人と人の温かみが沁みてくるやっぱり小津らしい作品で良かった良かった。
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