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ヴィヴィアン・マイヤーを探してのchsyのレビュー・感想・評価

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ふと思う。人間の記憶のある場面をスキャンして映像として残せたら…
忘れたくない記憶を形に出来たら…
そんな願いが写真の発明の発端?
今でも写真や動画にできなかったあの瞬間の記憶を取り出して残せたら…
と思うことがある。

確かにそーと―変わった女性。
とにかくなんでも溜め込んでいたというエピソードから察するに…
彼女は、見たものを切り取り残しておきたかったのでは。
収集家の性、微小な特性や些細な違いに目がゆく、そこに希少性を感じる。
で、記録したい、集めたい…分かる気もする…

彼女の残した膨大な写真はそのほとんどがフィルムやネガの状態で残されていた。1人の一般女性が人生で見てきたモノの記録としては最大数になるのでは?
今は失われた過去の記憶、なかったはずの記録が今多くの人の関心を呼ぶ様は、時空を超えた弔いのようだ。
撮影をしていた当時も、被写体を写真に収め、収集が完了することで、安心したのかも知れない。まるで一つの儀式を終えたように。

それにしても、彼女の残した膨大な数のネガやフィルムのみならず、倉庫に保管された遺品などを整理し、発表までこぎつけたジョン・マルーフの努力は凄い!
それががなければ、決して映画として日の目を見ることはなかったのだから。
全くの偶然、運命的な巡りあわせの不思議、その驚きこそが作品にエネルギーを与えている。

(2015/10)
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