mimitakoyaki

彼の見つめる先にのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

彼の見つめる先に(2014年製作の映画)
4.7
これは、これはとっても好きなやつ!
なんて瑞々しい青春…
主人公のレオナルドが持つ障害やセクシャリティといった特徴はありながらも、思春期に経験するいろんな心模様がしっかりと描きこまれていて、それが普遍的だからとても共感できるのです。

なおかつ、ストーリーが優しくてとっても爽やか。
かと言って上辺をなぞって美化してるのではなく、自分と他者との間で葛藤し、他者を通して自分自身を見つめるところがちゃんと丁寧に描かれてるし、映像も柔らかいパステルな感じも良かったです。
そうそう、音楽もめちゃくちゃ良いんですよ!

主人公のレオは盲目なので、登下校など普段のサポートを幼馴染の女の子ジョバンナがしてくれて仲良しなんですね。
そこへ、巻き毛の転校生ガブリエルがやって来て、3人の関係が変化していくのです。

ガブリエルは、目が見えないレオを映画館に連れて行き、月蝕を見ようと誘い、自転車に乗せ、クラッシックばかり聴いてたレオにベル&セバスチャンを聴かせる。
レオの事が心配でつい過保護で過干渉になってしまうお母さんとは違って(もちろんお母さんの気持ちもすごくわかる)、新しい世界に導いてくれるんです。
目が見えないから無理とか危ないとか、そんな決めつけしないで、楽しいこと素敵なことを君と一緒にしたいんだという素直な気持ちが伝わってきて、なんと愛おしいことか!

レオは盲目だから、幼馴染のジョバンナの顔も知らない。
人を好きになる時、ルックスや服装などのその人の雰囲気って大きな要素になると思いますが、レオは見えないから、人の匂いやその人の接し方、好み、内面など目に見えるもの以外から感じるんですよね。
もちろんもともと持ち合わせたセクシャリティはあるんでしょうけど、ごくごく自然に恋が芽生えていく過程がほんとに素敵でした。

ジョバンナもロマンスに憧れる普通の女の子なんだけど、今まで一番近くにいてお世話してあげてたレオがガブリエルと仲良くなってくると、自分の居場所や存在意義を見失って、それが嫉妬して拗ねたりするところなんかもすごくリアルでよくわかるんですよね。
自分だけ置いてけぼりになって、もう必要とされないのかなという寂しさや焦り、それって自分の身にも覚えがあります。

素敵なシーンがいくつもあったけど、レオとガブリエルが自転車に乗って疾走するシーンはとても印象的で、新しい自分との出会いや、自分の力で前に進んで自立していく事を象徴してるように感じてグッときました。

またレオもガブリエルもジョバンナも絵に描いたような美形でもなく、普通な感じがリアルで良かったな。
イジワルなクラスメートの方がイケメンでしたからね。
人に惹かれるのは見た目だけではないというところと合致していました。

クラスメートにからかわれたレオとガブリエルたちが最後にとったささやかな行為を見た時、一気に感動が押し寄せ、ありのままの自分を受け入れ肯定できること、そして、その自分への信頼や自信は、心を許せる友達の存在があったからこそであって、それがひとつのある行為によって見る者に伝える見せ方が素晴らしく、ほんとに素敵な終わりになってて、とっても良い映画を観た満足感で満たされました。

素晴らしいブラジルの青春映画、いろんな人に観てもらいたいです!

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