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彼の見つめる先にのmimotoxmimotoのレビュー・感想・評価

彼の見つめる先に(2014年製作の映画)
4.5
過保護な親への反抗心、誰かを好きになること、親友とのけんか、クラスのバカないじめっ子、障害、自分と自分の周りにある当たり前の全てが、裏も表もなく当たり前に描かれることの素晴らしさ。
一緒に映画を観た夫が「性的指向って何なんだろうって考えさせられた」と言っていて、なるほどと思ったのだけど、そういう力がこの映画にはある。
主人公の長年の友人が、転校生に言う台詞「彼は、わたしじゃなくて無意識に、一瞬であなたを選んだ」が胸を突いてくる。
誰かを好きになること、または、誰かを好きにならないことは、性別にも見た目にも文化にも何にも束縛されない、純粋で根源的で当たり前のことだ。その当たり前のことが、過剰にドラマティックに描かれるでもなく、その眩しさの陰が滲むわけでもなく、ただそこにあるものとして扱われる。そのなんと美しいことか。

夏の光とプール。クラッシックとベルセバ。君を乗せて走るBMX。見えない映画と月食。見えない好きな人の匂い。

“自分だけ見えている非対称性”が顕になるシーンにはハッとする。

繊細さと大胆さが入り混じった恋心って、眩しくてたまらないんだけど、十代の特権かも知れない。

とにかく、すごくいい映画だった。

LGBTQ映画だとかもう分けなくていい。分けることは区別することだから、もう区別したくない。流動的な愛の形がある、それをそのまま当たり前に尊重できる価値観にアップデートしようよ。
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