松原慶太

自由が丘での松原慶太のレビュー・感想・評価

自由が丘で(2014年製作の映画)
3.2
韓国のとある街に、かつての恋人を捜しにやってきた日本人(加瀬亮)の話。よくもわるくもテキトーなホン・サンスの近作のなかでは、わりとテーマとかプロットをちゃんと考えてるほうの作品だと思う。個人的には愉快に鑑賞。

加瀬くんは、女の所在が分らないので置き手紙を残し、すぐ近くにゲストハウスを借りる。昼は街なかをブラブラし、夜は知り合いになったオヤジと飲み歩く日々。果たしてあこがれの彼女に再会できるのか。やがて、偶然「自由が丘」というカフェの主人(ムン・ソリ)と仲良くなるのだが...。

加瀬くんは、評論家・吉田健一の「時間」という本をつねに持ち歩き「過去とか現在とか未来なんて人間の想像の産物に過ぎない」などとテツガク的な会話をしたりする。ここらへんはたぶんこの映画のテーマに近い部分だったりする。

ちなみに、ここらへんはホン・サンスの元ネタ、エリック・ロメール(例えば「春のソナタ」で主人公のリセ教師が飯を食いながらカントを議論する場面)を思いおこさせる。

その時間論のとおり、この映画も、過去と現在の時制がかなり入り乱れて展開する。ホン・サンスはわりとふだんから、とくに意味なく時系列をシャッフルしたがる作家だと思うけど、本作ではそれがかなり意図的になされていると感じた。

ラストは解釈が別れるかもしれませんが、けっきょく「あこがれの彼女」には会えなかったんだけれども、その彼女をジタバタ追いかける過程で、また別の出逢いがあったりなかったりする、みたいな話だと捉えた。たしかにこうしたプロットにはある種の真実味があるように思う。