晴れない空の降らない雨

野火の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.0
 観る機会をことごとく逃してきたので、「やっと」という気分。人は最後のイモをタバコと交換する、という作中のセリフが印象的だった。状況が極限になればなるほど、つまり生存に見込みがなくなるほど、幻想の快楽に飛びつくのは、まぁそうだろうな。そうした旧日本兵は、まるでリセッションが長引き、借金が膨らみ、少子高齢化は止まらずに、国力が落ちれば落ちるほど、「日本はこんなに凄い」「中国や韓国はこんなに酷い」といった言説に飛びつく最近の日本人のようにも見えた。

 それにしても、人間はどこまで人間でなくなれるのか、そして、その最果てにある「死体」の映画だった。と同時に「顔」の映画でもあると感じた。この2つは関連している。顔は、人間が人間を人間と真っ先に知覚する標識だからだ。(例えば、頭がなければ一目で死体と分かる)。その「顔」が狂気一色に染まるとき、かつて人間だったもの=「死体」は「食べ物」になる。

 なんか義務感にかられて真面目くさったこと書いてしまったが、死体、死体、死体って感じで、うわーグロいわーって楽しんでもいいんじゃないでしょうか。死体と肉片の見本市。

 不満点は、仰々しいBGMの唐突な挿入が多かったことと、重要人物なのに大根役者使っていたところかな。

 点数は内容への評価以上に、こういう映画を作る人がいるという事実そのものに対して付けたものである。なるべく早いうちに市川版も観たい。