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野火のefnのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.1
 ここまで南方戦線の地獄を映画に落とし込んだ作品を他に見たことがない。蒸し暑く臭うような熱帯雨林、日光で灼熱地獄と化した丘。蛆に食われるがままになっている落伍兵たち……。密林をゆく兵隊たちも誰も彼もが異様な雰囲気を身にまとっている。頬は汗と諸々の汚れで垢光りし、軍服も泥にまみれ擦り切れて今にも敗れそうだ。土のついた芋を貪る様は、うだるとかむせるといった言葉で表しきれない強烈な印象を与える。
 また演技も素晴らしい。ヤクザや体育会系の恫喝的な態度、口調を軍隊に合わせて調整し嵌められている。そもそも軍隊、特に旧軍は究極の体育会系なのだ。階級と従軍年数に応じて上の兵隊は絶対的な権限を握り、その元で私的制裁は日常茶飯事だったわけで、そういった場面で戦争映画のような軍隊言葉だけの会話は考えにくい。また今井正のような演説も岡本のような拍子をとるようものもありえなかったろう。そういう意味で恫喝的な言い回しの数々はこれまで以上に軍隊の性質を表す成功していると思われる。従軍経験者が絶えたここ十年のことを考慮すると、特に注目すべき成果だろう。
 すべての技巧が南方戦線に結実した傑作。
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