show

野火のshowのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.5
NHK戦争証言アーカイブズというサイトがある。その名のとおり、NHKが集めた戦争に関する証言を集約したページである。そこでは数多くの証言がアーカイブされているが、語られる戦争の体験は、苛酷、凄惨、酸鼻、そういった言葉では表現しきれないほどの強いインパクトをもつ。レイテ島で戦った方の話のなかには、イモリやヤドカリを食べた話も出てくる。

同じ人の証言のなかには、塩が足りなくて兵士は「人間の顔色してねえですよ」という話があった。この映画でも、塩を見つけてきた田村の話があった。一例だけど、そういったリアリティの積み重ねがこの映画ではしっかり再現されている。人肉食が話題になりがちな映画だけど、細かな部分もしっかり描かれていて、戦争の苛烈さが深みをもって伝わってくる。

映像ならではの印象は、やたら画面が明るいこと。古さを出すためにあえて画面を暗くしたり汚したりということをしていない。それは「古いものを描くための技術」を捨て、「当時の人の眼には風景が明るく見えていたはずだ」という信念を優先させたように感じる。観客の「戦争イメージ」に対する、監督からの挑戦なのかもしれない。
show

show