矢吹

野火の矢吹のレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.7
戦争。
大きな枠での戦争ではなく、
1人の兵士のリアル。
野火を見る。
あの森の声が聞こえてくる。

三人称で描いた野火。
クロースアップによる視野の狭さで
今、自分がどこにいるのかわからない恐怖をとても感じる。
画面の自然の色鮮やかさと、その一方での闇の深さ。フィリピンの苛烈さを生々しく描く。
死体と肉食のリアル。
映像が与えることのできる重み。
自然の音が響く。
臨場感とはこのことか。
役者の凄さを含めて実写の素晴らしさをとても感じる。


十字架のくだりの雑さ。
原作にある「神」という存在をまるまる削除。
出来事の上澄みだけをさらう感じ。支離滅裂。
だから心の葛藤が弱い。
無駄に音楽を足す。

やっぱり古今東西の原作と映画は別物。伝えたいことが違うならなおさら。今回もおそらく物語の本質が違うところにあった。
もし両者が同じことを表現したいのならば「これは全くもってクソ」みたいな評価もできるけどもなあ。という。

ざっくりと個人的な印象としては
こちら側は戦争のリアル、人の狂気が押し出されて。
原作はそれはありきで、人生論や感性や感覚、この世に「神」はいるのか、いないのかが問題になってくる。
どっちが良いとかではなく別物。

原作を読んでる時だけうるさくなるようやけど、だからこその、自分の中で再確認させてもらった事と、原作の紹介です。
矢吹

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