ネブュラー

野火のネブュラーのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.5
うすら寒くなってきましたが、この映画は暑苦しい。もうじめじめしていて、逃げ場がない。どっちが正しい方向なのかもよくわからない。まともに食料もないとくると、絶望しかない。もちろん戦争に行ったこともないし、その時代を生きてないけど、戦争においての恐怖を実感させられるような感覚に陥る。次の瞬間には死んでいるかもしれない、死にかけた状態でウジ虫が体中に沸いている、生きるために仲間の人肉を食わなければいけない。
人間として生を受けて、人間らしからぬ状態になってしまうことの恐怖。
「夜と霧」的な、どれほどの極限状態でも、人としての尊厳を保つことはできるのかという一つの命題にぶち当たる1人の男の物語だと思う。
塚本晋也監督の地味な感じ、すぐ隣に死がある感覚をリアルに想起させるような普通感。
すごい嫌でした。自分はこうなりたくない、ウジ虫にたかられたくない、人肉として食われたくない、人肉を食いたくないと頭の中でぐるぐる悶々としてしまう。
中村達也伍長の「まごまごしてると喰っちまうぞ」「俺が死んだら、ここ食ってもいいよ」。なんだか名言。
とりあえず、極限状態を知らない自分は「いやだぞ俺は!」と自分に言い聞かせながら、ただ男の葛藤を見守ることしかできない。
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