むらむら

野火のむらむらのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
5.0
「塚本晋也の、塚本晋也による、塚本晋也のための映画」

冒頭、監督・脚本・主演を務める塚本晋也のどアップで始まった瞬間から「キター!」と叫んでしまったくらい、塚本晋也を堪能できる本作。観終わった後も、塚本晋也の色々なシーンが頭をよぎります。

咳き込む塚本晋也、逃げる塚本晋也、怯える塚本晋也、飢えに苦しむ塚本晋也など、「月刊 塚本晋也」があったら巻頭カラーに載せたいくらいの塚本晋也がてんこ盛り。

この塚本晋也の波状攻撃で、細かい点は忘れてしまいました。

普段の俺なら、「肺病の設定、どうなったんだっけ?」とか「食料の芋、他人にポンポン与えすぎじゃね?」とか「悲惨な銃撃戦のとき、塚本晋也だけ無傷なのは鉄男だからかな」とか、そんなことを考えてしまいますが、全く脳裏をよぎりませんでした。

何度も書きますが、やはりこの映画の勝因は塚本晋也祭りってくらい、塚本晋也に寄せた点。途中、ちょっとだけリリー・フランキーが出てきますが「ええい、カメラを塚本晋也に向けんかい!」と、覚醒剤の禁断症状が出たときと同じくらいイライラしてしまいました。

これで香川照之とかまで出してたら単なるクドい顔大会になってしまうので、塚本晋也だけで良いのです。

アイドル好きな俺としては、塚本晋也の役を白石麻衣がやってくれてれば……と妄想しましたが、それは戦時下のジャングルで食べ物を探すくらい無い物ねだりというもの。

この映画は、監督・脚本・主演と自己愛の強い塚本晋也を楽しむ作品なのです。平野勝之の映画が好きな人は、どっぷりハマれると感じましたね。

ちなみに人肉食というテーマでは「ひかりごけ」(戯曲)、映画「生きてこそ」「食人族/グリーン・インフェルノ」、野田秀樹の某戯曲など、テイストの違う名作が色々とあるので、興味ある方はチェックしてみてください。そういえば、以前佐川一政のトークイベントに行ったことをふと、思い出しました。

既に俺の心は、塚本晋也ロスな気持ちでいっぱいです。うーん、「沈黙」でも観てみようかな!
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