さすらいの雑魚

野火のさすらいの雑魚のレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
4.5
残虐で醜悪なものを美しく撮る。
生ゴミをセクシーに、ゲロを壮麗に撮る。
とても難しいと思うけど、できる人が稀にいる。
塚本晋也監督ってそうゆう人。
その塚本監督のキャリアでも入魂の一本が野火なのかな?とボクは思うのです。
野火は目を背けたくなるラストが待ってます、残酷で絶望的な結びに観客は引きずり込まれます。魂傷つきます、無傷では終われません。観るまえに心に甲冑着せてください。そんな映画です。
酸鼻を極める敗走の途上の地獄に、死骸がゴミのように重なり臥す屍街道に、なぜが惹かれてストーリーを追わされてしまう。美しい南洋の緑と蟻のように潰されゆく日本兵の地獄の明暗の激しさに、幻惑され動揺つつ気がつけば終劇、そしてボクらの心傷つく。
凄腕の映画監督が「ここが練磨の業のふるい処ぞっ!」と渾身の技芸を尽くして、ザラつく鋼刃の擦過音も高らかにボクらに斬りつけて来る、そんな映画が野火。
楽しみ癒やされるのでなく、75年前の悲劇に寄り添いともに苦しみ傷つくための映画が、ボクはあっても良いと思うし、この国にはそうゆう映画が少なすぎた、と思ったりもした😓(思うに火垂るの墓はそんな感じの映画)
万人にはとてもオススメできない、ゴアでハードで激辛な映画。でも観れば何かが残る映画、それが野火。