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雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのyumeayuのレビュー・感想・評価

4.0
心のオーバーホール

"愛"の反対は"無関心" だと誰かが言っていたのを思い出した。

主人公のデイヴィスは妻に対して全く愛情がなかった訳ではないと思う。しかし、仕事に追われる毎日を過ごして行くうちに次第に無関心になっていってしまったのだろう。

妻の葬儀で涙を流すことができず、鏡の前で無理やり泣き顔を作ってみせる姿はなんとも切ない。
心のどこかに喪失感のようなものはありつつも、それがなんなのか、デイヴィス本人も理解できないようだった。

「心の修理も車の修理も同じことだ。まず隅々まで点検して、組み立て直すんだ」

義父からのアドバイスを受けて、身の回りのあらゆるものを破壊神のごとく狂ったように壊しまくるデイヴィス(笑)。
っていうか、お義父さんが言いたかったのはそういう意味じゃないんだろうけどな(笑)。

でも、この破壊衝動に駆られる気持ちわからなくもない。
何もかもぶっ壊してリセットしたいと思うときってある。普通はその前に理性が働いたり、別の方法をとりますけどね。
そういう意味では、破壊の限りを尽くしまくるデイヴィスの姿はどこか羨ましくもあり、見ていて気持ち良かった。

破壊により徐々に平らになってきたデイヴィスの心を再生したのは、カレン親子とのコミュニケーションだろう。
特に息子クリスとのやりとりはぶっ飛んでるんだけど、お互いに心の拠り所になっているようだった。

さて、賛否がある邦題について。
原題は「Demolition」(破壊)。
邦題は劇中の妻からのメッセージの引用なのだが、なんとも詩的な言葉になっていて、ちょっとカッコつけすぎな気がする。

個人的に感じたのは冷蔵庫に貼ってあった付箋と同じで、あのサンバイザーの付箋も日常の何気ない妻からのちょっとしたジョークというか、彼女なりのユーモアやイタズラ心だったように思える。
だって死ぬなんて思ってないですから、急にポエムっぽいの書かないですよ。

オープニングの車のシーンでは冷え切った夫婦のように見えていたけど、本当の彼女はとてもチャーミングでかわいらしい人だったのではないか。
そして、彼女は昔の二人に戻ろうと歩み寄ろうとしていたのでは?

デイヴィスが涙を流せたのは、妻の気持ちと無関心であった自分の心にようやく気づいたからだと思う。
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