朱音

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は主人公デイヴィスの心情に思い入れられるか否かで賛否がパックリ割れる作品なんじゃないかな。
私にとってはパーソナルな部分での琴線に触れたとてもとても大切な一作となった。

社会生活の中でいつの間にか失われていた人間的感情と、それに伴う関心。妻を事故で亡くすいう大変な契機を経て、デイヴィスは気付く。
妻を失ったというのに自分はまるで悲しんでいないし、妻の事もよく知らない。不感症的な自分に違和感を覚えつつも、あんまり周囲の人間に心配され、変に思われるものだから何となく気になって、自己を見つめ直してみることにした。

義父のアドバイスを受け、身の周りにある物すべて、目のついた端から次々と解体してゆく。
それに合わせて彼は、エリート金融マンとしてビジネス社会で生きる上で身に纏っていったもの、社交辞令とか、建て前だとか、空気を読んで合わせるといった習慣的な在り方、行いを一つずつパージしてゆく。

この映画は実存と向き合うという切実なテーマを描いている。
にもかかわらず映画全体に深刻で重々しい雰囲気はなく、むしろ笑えるし、最高にワクワクしてくる。

物理的に何かをぶっ壊すという行為は、やる側はもちろん、見ているだけでエクスタシーを感じるものだし、デイヴィスが人目も憚らず、まるで幼児退行したかのように刹那的に自由意思を謳歌する姿にはヒロイックささえ感じられる。

本作を観ていて非常に似たような感覚を味わったのを思い出した。デヴィッド・フィンチャー監督の「ファイト・クラブ」に似ているんだ。だからクリスみたいなヤンチャで気難しい男の子は惹かれちゃうよね。

ジェイク・ギレンホールは私の最も好きな俳優の1人であり、最も次の作品が気になる俳優である。彼の作品選びのセンスが素晴らしいのか、それとも気鋭の作家達が彼を放っておかないのか、それは私の知るところではないが、とにかくジェイク・ギレンホールの出演作にハズレなし。
キャスティングも演技も素晴らしかった。

この映画に感動し過ぎて、まともな評価を下せない。
朱音

朱音