YasujiOshiba

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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ミハくんの半ば強引なオススメのおかげで、ようやく見ることができました。

いや、ぼくはね、ナオミ・ワッツが大好きなんだよね。なんだかテリー・ガーを思い出すんだけどね。美人だけど線が細くて、どこか寂しくて、薄幸で、小さな幸せを求めるあまり、道を少しずつ外れてゆく、そんなキャラクター。胸にズキンとくるんだよね。

そんなワッツが、同じくもの悲しい男を演じさせると右に出る者がいないジェイク・ギレンホールと共演して、ぼくと同世代のジャン=マレク・ヴァレのヨーロッパ映画のようなしっとりした、それでいてシャープな演出のおかげもあって、なんだかとっても心地に良い「解体」(Demolition)と再生の寓話を堪能させてもらえました。

解体ってのは、悲しみの解体なんだけど、解体すべきものを解体するのにも、やっぱり一人じゃ無理なんだよな僕らは。だからメリーゴーラウンドなんだよ。イタリア語では《ジョストラ gisotra 》っていうんだけど、これはねえ「giostrare 馬上試合をする」という動詞から来ていて、そもそもはラテン語の「iuxtāre 近くにいる」が語源。

だからディヴィス(ギレンホール)の近くにはカレン(ワッツ)と、さらにはその息子のクリス(ジュダ・ルイス、この子は存在感は抜群だったね!)が近くにいてくれることで、深い喪失の縁を「ジョストラーレ giostrare 」(うまく切り抜ける)ことができたというわけなのだろう。

そう、この映画のテーマは「メリーゴーラウンド」。どんなに悲しくても、悲しさがわからないくらい悲しくて、その悲しさを「取り除く」(demolire )ためには、誰かと一緒に「明るくグルグル進む」(Merry-go-round)ってことなんだ。相手は誰でもいいのさ。ラストシーンで、ディヴィスが一緒に走り出す子どもたちのようにね。

いやあ、いい映画でした。ジャン=マルク・ヴァレもそうだけど、このところカナダ映画ってすごくよいよね。これはもう、ずっと見逃していたヴァレ監督の『ダラス・バイヤーズクラブ』も、がぜん、観たくなってきました。
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