ぎー

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのぎーのレビュー・感想・評価

2.5
『デイヴィス、手紙をありがとう。怪我をした以外は正直になれて良かった。』
ヴァレ監督特集2作品目。
妻ジュリアを交通事故で失った主人公デイヴィスが自身の感情の欠落に気づき、義父フィルやシングルマザーのカレンやその息子クリスとの交流を通して、その人間性が変化していく様子を描いた映画。

作品の全体的な印象はモダンでスタイリッシュ。
勤務先の投資銀行も自宅もシャープでシンプルで、ある意味無機質で温度感がない。
今思うとこれは主人公の心情を比喩していたのかも知れない。

事故の後入院していた病院の自販機が故障していたことに対するクレームを言ったことから、対応してくれたカレンとの交流が始まる。
描写がとにかく独特だけど、たしかにこの映画が言っていることは的を得ていると思う。
誰もが本心を押し隠して社会生活を送っている。
ただその押し隠し具合が半端なかったり、本心を家族にすら言えない状況にあると、人間性が故障してしまう。
デイヴィスは完全にそれだった。

そのメッセージは分かるんだけど、壊れてしまった後のデイヴィスの行動は奇怪過ぎて理解不能だった。
1番印象に残ったシーンは、デイヴィスがクリスと一緒に自宅を破壊する場面。
多分、これまでの本心を覆い隠して演じて来た仮面をぶち壊す比喩なんだろうけど、ものすごく嫌悪感を抱いた。
壊すことなんて誰にでもできる。
本心を覆い隠しすぎることが正だとは思わないけど、どうしたって社会生活を送るうえでは一定程度必要だし、その発露が破壊なんだとしたらバカげてると思う。

なかなか理解不能な展開で困惑していたけど、終盤デイヴィスが妻への愛情を告白し、クリスも自身がゲイであることを告白し、カレンが愛してもいない彼氏と別れることで伏線が回収されて、何とかギリギリ映画の体裁を保っていた。

雰囲気はお洒落で素敵だし、決して間違ったことを言っている映画だとは思わないけど、ストーリー展開が意味不明すぎて、主人公の行動も奇怪で感情移入できず、正直ワクワクする映画ではなかった。
映画の邦題が最も人々をワクワクさせる、マーケティングが上手な映画だと思った。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
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