真田ピロシキ

世界一キライなあなたにの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

世界一キライなあなたに(2015年製作の映画)
4.0
フィクションに対して現実の鏡である汚さを求めるのなら出てくるのは善良な人ばかりのこの映画はヌルい。汚さがあった方が話としても刺激的でどちらかと言うと好きなのだけれどそういうのばかり見てると疲れる。きたねー人間は現実世界でお釣りがくるほど間に合っている。そんなリアルへの疲れを癒してくれる。それでいてしょーもないラブコメでもなく含蓄する所がある。

ウィルさんは凄いイケメン。顔は勿論として、全身麻痺で本来ならもっと偏屈な野郎になってても理解される立場でありながら同情を求めず気配りすら出来る。体が動いていた頃に007のパロディ動画を撮っていたのが板に着くスーパー英国紳士。心身共にイケメンすぎて当て馬にされている陸上彼氏の嫉妬も仕方ないと納得させられてしまう。あんな超美人の彼女が四六時中金持ちイケメンといたら誰だって疑う。自分の方が上だと自惚れることも出来ない。キミなら他にも良い相手が見つかるはずだから強く生きてくれ。こういう脇役すら引き立てるのがウィルさんの完璧さ。嫌味がない。もっと言うと介護士の兄ちゃんも文句の付け所のない良い奴で、ウィルさんの人徳で良い人間に恵まれたのか、周りの人のおかげで良い人間になったのか、どちらなのかは分からないが経済的な余裕が心の豊かさを生んでいる面はあると思う。金は大事なんです。

ウィルさんとの縁で明るいが貧しい田舎娘のエミリア・クラーク様の人生にも転機が訪れる。例えば26歳まで見てなかった字幕の映画を見始めたように、狭い田舎の貧困層では限られていた視野が広まる。これは特殊な状況の話でもなく普遍的な大事な事。心地良い趣味の世界にだけ没頭していれば安定するがそれじゃダメ。もっと機会が許す限り外に出て冒険するんだ!と。そうして色々なことに挑戦するエミリア様は前以上に明るく輝く。そして本当に大切な人のために自分が重荷になるのも拒むウィルさんの貴族的精神。こんな物分かりの良すぎる人間がいるはずない。でもフィクションの中でくらい見ていたいです。

2度目の鑑賞で最初に見た時はエミリア様の一人だけ顔芸がどうにも気になっていたのだけど今度は納得が行った。シーン毎に変わっている服装と同様に多様な表情が映画に彩りを与える。時に20歳くらいに幼く時に年齢以上の容貌を魅せる。最早力も威光も並ぶ者のいない最強の人間となったデナーリス様では見られない可愛さを見られるのもGoTファンとしては堪らない。憎っくきタイウィン公とは今回休戦中だ。この2人、GoTじゃ結局顔を合わせることなかったね。