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クリムゾン・ピークのJIZEのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
3.2
深紅の山頂"クリムゾンピーク"に聳え立つ優美な豪邸を舞台に不気味な怪現象と愛慾な憎悪を衒うゴシック調なロマンス映画!!外側に工夫を凝らし過ぎた映画と結論付けるべきか..まず監督の過去作『バンズ・ラビリンス(2007年)』を先に観た方が有る程度,暗黒調な世界観を熟知でき対比構造としても呑み込める鑑賞法だと思えた。また印象的な台詞で,序盤,女優作家を目指す主役イーディアスが編集者から「幽霊より,恋愛ものでないと..」と告げられその台詞が終盤に直結する構造..実に味わい深い..まず先に率直な感想を申せば..観終えた直後..結局何を1番訴え掛けたい映画だったのか意識(認知)が遅れた..要は内容そのものが意図する目的性が掴み難い..この現象に苛まれた者は私同様に正直多いんじゃないか..つまり"核心部の視点軸"に難がある映画だと感じた。今評では物語の詳細は(ミステリ含むため)避け構造中心のお話(構成)を。題材も雪景色が舞う世界観とは裏腹,暗黒調な執念,愛憎,嫉妬漂う古典的で高等向けな内容(脚本)。美的な外観は特質好みだっただけに内側の無機能性が映画全体を客観視しても安易に入り込める構造にはなってなかったんじゃないだろうか....外側の視覚面を堪能しあくまで内側は後付け感が結構永遠に私自身は拭い切れなかった後味....

上述したこの映画に附随する違和感。つまりこういう事なんじゃないだろうか。要はこの映画を観る前に抱いた"虚な物語像(事前意識)"と観た後に突き刺さる"実な物語像(事後意識)"の予想に反す大幅な落差!!が首を捻らざるを負えない核的な原因だと。まあそのままなんですが,私自身,当初本作は屋敷に住み憑く"化物映画"かと漠然的に思い込んでいた節があり当然,ああ..そっち方向かぁ..意識は朦朧と..その先入観自体が邪魔or意外性の落差が濃すぎた為か"化け物軸"から"◯◯軸"に視点が移行し問題提起の部分が異常に縮まる降下感は題材そのものの世界観ともクロスせず陳腐だなぁ..と感じた。また旧来の時代背景による影響でか,観念or比喩による台詞の言い回しも普通に聞いてて現実離れし取っ付きにくい。この辺ももう少しあっさり描いた方が(119分尺or高貴な会話場面の)推進力的にも突き詰めれたのでは感がある..。事前に想像する王道サスペンスorホラー作品像と実際蓋を開けた小規模に収まる作品像とのズレはこの映画の大々的な敗因に思えた。面白くない!!とまで批判しないが,声高々に最高!!とも言い難く三角関係が織り成す愛憎劇のやりとりを楽しめるか否かで評価が割れる微妙な作品だと思いましたね。特に序盤&中盤の事態が進展せず受動的にイーディスが対象に導かれ道を踏み外す推進力の脆弱感は俄然好めなかった。終盤はまだマシなんだが,中盤以前まで実は彼女自身の持ち得る有志があまり反映されず行き当たりばったりで因縁闘争が勃発し急遽事態の方向性が鞘に収まる感じは望んでた展開から懸け離れ結果的に中途半端なファンタジを織り交ぜた旧来の愛憎劇感が拭えないなと。期待値を上げすぎたか。。

概要。『パシフィックリム(2013年)』や『バンズ・ラビリンス(2007年)』の鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が描くゴシック調な暗黒ミステリー映画。主演は『アリス・イン・ワンダーランド(2010年)』のミア・ワシコウスカと『アベンジャーズ(2012年)』のトム・ヒドルストン,『ゼロ・ダーク・サーティ(2013年)』のジェシカ・チャスティン等注目俳優が名を連ねた。また劇中で登場する深紅の山頂に聳え立つ屋敷は実際に約6ヶ月を費やし建造されました。

捉え方次第では勿論惚れ惚れウットリする美点も当然ある。つまり羞悪,愛憎,報復,因縁など骨格は内面的な情を炙り出す暗黒調,人間の醜い欲望が擦れ違い憎しみを帯び染み渡る構造。両者通づる異常緒なダークサスペンス感は至高領域でただひれ伏すままに極上。また1つ前に観た『イット・フォローズ(2016年)』でも通づる"間接的な恐怖感"を本作は演出する。暴力的な目を覆う(顔面をああする)場面や亡霊の不気味な造形,畸形な鳴き声など実感的に美点は有り余った。敢えて命名すれば三角関係に毒入り茶を配した"罪無き者たちのドロ沼群像劇"と命名すべきか.....

主演ミア・ワシコウスカの霊感を持つ役柄に関しても苦言を呈せば前に『アリス・イン・ワンダーランド』でも時代背景的に既に同じような役柄をやってるんだが,やはり嫌な予感は的中。彼女の演技的な側面で感じ取れる役柄の新鮮味は本作でほぼ感じ得なかった(減点要素)。ドレス衣装と細身な彼女の整合性は取れてるんだけど,特に終盤,屋敷中走り回ったり狂喜乱舞する不細工な物語の転ばせ方も優美な魅せ方を演出できなかったのかと。まあそれだけで終わればまだいいんだが,同様に終盤,屋敷最上階の雪景色の地形を利用し"ある敵"と雪崩的に対峙が配されるB級映画を彷彿とさせた敵側との対峙場面..気品や優雅といった格式張る要素は画角から瞬時に吹き飛び無情な追跡劇がグダグダ継続してしまう..(題材的にも)実に頂けない..畳み掛けの異常さは言わずもがな,最終場面の魅せ方が有る意味王道過ぎて本気か⁉︎..とため息が出た。追いかけごっこをこの映画には望んでおらず直視し難い光景が終盤特に際立った印象です。。

総評。
役者陣ミアやトムヒなど100歩譲りファン目線でなら実際身体を交え官能的な絡み合う場面も過激目にあり肉体美を堪能する手段では元が取れる映画なのかと。そして残念ながらゴア描写も適度に含まれる。顔まわりの損傷が苦手な方は断固お勧めできないのかと..。あと最大の美点である美術面!!華麗なカラフル調のドレス衣装。色調で人物の内面を体現し衣装に推進力を持たす演出も前に観たティム・バートン監督『ビックアイズ(2015年)』並みに魅力的。例えば,イーディスのシルク調は無色透明な繊細さを体現し寛容な精神を示唆させる働きなど,逆に悪事なルシールでは刺繍入りドレス衣装など悲観的なカタストロフ, 不毛さなど消極的な暗喩を配しデザインで個性を発揮させる演出。昨年観た『シンデレラ(2015年)』も美術面で彷彿とさせる。他に建造物or屋敷の使い古された小道具など地味な配慮が行き届き視覚面でも十分楽しめた。また速報でもギレルモ監督が60年代のSF映画『ミクロの決死圏(1966年)』のリメイク企画が現実化する見込みがあるそうでファンは必見!!雪景色な映像美1本で堪能するも良し!ドロドロな愛憎劇を垣間見るも良し!構造的にも正統派な作品だとは言い難く受け手に託され裁量の余地が狭い映画だと最終的には感じた。あと比較面でも昨日扱った『イット・フォローズ(2016年)』の方が万人にお勧めでき楽しめる健全な映画だと,思います!!全編ゴシック調で"悪魔"が潜む屋敷物を是非。