垂直落下式サミング

クリムゾン・ピークの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

クリムゾン・ピーク(2015年製作の映画)
4.3
20世紀初頭のニューヨーク。文芸作家を目指す富豪の娘が、イギリスからやって来た準男爵で発明家の男に運命を感じて結婚するが、嫁いだ先で恐ろしい呪いに悩まされる。古びた大きな屋敷を舞台に、怖ろしくも美しい幽霊譚を描いたゴシックホラー。
美術!とにもかくにも美術!なにそのインテリア!そんな服で寝るの!湯飲みのデザインも素敵!やたらと目が楽しい。
幽霊もキモ怖。ジャパニーズホラーのような出し方じゃなくて、昔ながらの怪奇譚のテイストでデザイン性を強く意識して、意味を込めてある。狙ったショック表現が控えめだから、ホラー苦手な人でも両目開けてみていられると思う。
無垢な子供と害悪な環境を形作る大人というデルトロらしいモチーフが出てこないけど、今回のはなしは、主役の女の子も、その旦那もお姉さんも、主要人物みんな幼児性を残したままのキャラクターなので、現代人の精神的退行にマッチする人物造形ではある。より広い大衆に向けた大人向けの絵本って感じ。悲惨すぎてみてらんなかった『パンズラビリンス』よりも好きかな。
ミア・ワシコウスカもトム・ヒドルストンも、理想と夢を語るだけのガキンチョなのに、お父さんは超オトナ。尊敬できる父親ってデルトロ作品のなかではかなり珍しい。
一介の労働者から資産家へと、一代で身を成した立派なパパ様。正しくアメリカン・ドリームの体現者だ。男の握手によって見せつけられる人間の厚み、ぷにぷにの手のひらを恥じるトムヒに共感。苦労知らずクリームパンデブなので、指パッチンに「ぺちっ」という音が混ざり始めた今日この頃であった。


『ギレルモ・デルトロの怪物の館』を買いました。僕等みたいな輩は、金持っててもロクなことに使わないんだよ、君だけじゃないんだ、君は一人じゃない。だから、この“高み”で君を待つ。おばけたちに囲まれた屋敷のなかに鎮座するデルトロが、こう言ってくれた。そんな気がした。まずはコレクションから。そしてセレクションへ。自分だけの博物館を作るまでの旅、長き道のりの先に、彼はいる。やっぱ敵わねえな。ありがとパイセン。最近ワクワクしてなかったけど、ちょっと元気でた。