ケンヤム

カリートの道のケンヤムのレビュー・感想・評価

カリートの道(1993年製作の映画)
4.5
銃を使った人間は幸せになれない。
この映画は、そんな映画です。

カリートは一流のギャングだったが、五年間の懲役を終えて、人並みの幸せを望んだ。
愛する人と南の島で、レンタカー屋を営んで慎ましく暮らす。
カリートの願いは平凡なものだった。

平凡で慎ましい夢だと思うけれど、なんてワガママなんだとも同時に思う。
お前は何人人を殺したんだ。
何人の人を麻薬でめちゃくちゃにしたんだ。
お前なんか幸せになれるわけない。

しかし、この映画を見ているとそんなカリートを応援したくなってくる。
それは、カリートが愛する人に対して優しいからだ。
応援したくなる理由はそれだけで十分だ。
幸せになってほしい。
殺されると分かっていても、死なないでくれと願ってしまう。

最初に結末を見せられているから、カリートの行動全てが死に向かっているように感じる。
カリートは生きようと必死なのに、傍観者である私たちはその行動が死に向かっていると知っている。
だからこそ、この映画は切ない。
底知れず切ない。

そして、気づく。
私たちもカリートと一緒だということを。
私たちも死に向かって生きているに過ぎないということを。
ケンヤム

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