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カリートの道のLudovicoMedのレビュー・感想・評価

カリートの道(1993年製作の映画)
4.5
もし、スカーフェイスのラストでトニーモンタナが生き延び、刑務所暮らしをしていたら。

本作は、スカーフェイスの後日談としても、十分機能するくらい、トニーを彷彿とさせる。

デパルマ × パチーノのギャング物の効果もあるが、カリートブリガンテのバックグラウンドの設定がもろだし、パチーノのリアルタイムの老いが、よりトニーモンタナという過去に演じたキャラに深みを増し、カリートというキャラに命を吹き込んでいるように感じた。

つまり、スカーフェイス→本作の順番で観ると、まるで、一人のギャングの成り上がり、人生転落、マフィア界から足を洗い堅気になるまでの、一大大河ドラマを鑑賞しているかのように。

やはり、一番の見どころは、パチーノ演じるカリートの生き様やカッコよさにある。

過去の自分への尊厳を守りつつも、第二の人生のため、決して犯罪を起こさず、それでも昔の仲間との友情や仁義を貫き通す。

スカーフェイスの「world is yours 」的な熱いセリフ回しも痺れるし、黒の革ジャケットに金のゴツい時計にグラサンのファッションは真似したくなるくらいかっこいい。

出所後のカリートは、少しでもヘマすれば、殺されるか、ムショに逆戻りというスリリングな緊張感が全編を支配する。

それに加え本作でも、しっかりとデパルマ監督のめくるめく映像技術が畳み掛けてくる。

「楽園」をイメージさせる描写が随所になされ、映画のゴール地点を丁寧にも示唆させる。

スローと細かいカットの使い分けで捲したてるような空気感の演出。
それに比較し、ゲイルの優雅なダンスシーンの艶かしいショットの使い分けにより、緊張を緩和させ、絶妙なバランスで成り立っている。

クライマックスでは、長回しの連発に加え、主人公と敵の視点がクルクル変わっていったり、クレーンショットからのズームなど驚異的なカメラワークで一気に引き込む。

映画全体を回想劇にして、カリートの主観で、語っていったあたりなんかも非常に秀逸だと思います。
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