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ゴンドラの3104のレビュー・感想・評価

ゴンドラ(1987年製作の映画)
3.9
撮影当時の時代の空気感が何より作品の「顔」になっている。
開放や高揚を携えた“華やかさ”の裏側、いやすぐ隣にあった閉塞や沈静が序盤から繰り返し描かれる。暗い80年代?いや80年代(に限らずどの時代でも)も暗かったのだ。光が濃いなら影もまた濃くなるように。

昔から気にはなっていたが長らく上映されない状態が続いていたこの作品。今回デジタルリマスター化もされ念願叶っての観賞。

予想(?)以上に繊細でリリカル。
華やかな都市風景と孤独な少女、青年などといった「断絶」「対比」が巧みに、ときに過度(ベタとも言おうか)に紡がれる。
都会の情景は少女や青年の孤独な心情のみならず、物語後半の下北の風景とも「断絶」「対比」の関係にある。

美しいカメラワーク、鮮やかな色味と音響(音叉という“武器”)、科白の少なさ。
そして冷たい母、遠巻きのクラスメイト、老いさらばえた父などの人物の「突き放し方」。
そのどちらからも、伊藤監督の“人やものを見る目の優しさ”が垣間見える。
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