ちろる

ゴンドラのちろるのレビュー・感想・評価

ゴンドラ(1987年製作の映画)
3.9
都会の片隅で、誰にも気づかれることなくそっと息を殺しているようなそんな少女はどれくらいいるのだろうか?
居場所がないと言葉にするよりもずっと少女の瞳は「誰か助けて」と訴えかけている。
この作品でかがりを演じたこの少女はこの作品のために見つけ出されたといっても過言ではない、台詞回しはとてもぎこちなくて棒読みのようなシーンも見受けられるが、沈黙の多いこの作品においてはそれは気にならない。
彼女の語らない時間の演技と、醸し出す強がりなのに心の中が震えているようなそんなオーラは、私をこの作品の中に引き込むのに十分だった。
80年代の作品ということご理由の一つなのか、ところどころにエキセントリックな映像描写を入れ込み、それが少女かがりと、ゴンドラの窓拭き青年良それぞれの心象世界を見事に表現し、もう息も出来なくなりそうな2人を東北に向かわせるのに十分な演出だった。
良の実家に行った後のユートピア感は圧巻。
ちょうど浅い呼吸を知らなかった人がが自然に深呼吸になる感覚。
敢えてこの後の事は描かずに、青く光る海辺で解放された魂がキラキラ光って、どうかこのままこの時間が続いてくれますようにと願った。
この作品のために選ばれた主役の少女はほかの作品には出ずに本当にこのかがりちゃんの中に取り込まれていったよう。
適度な素人っぽさと、堂々とした演技のアンパンランスさが画面に惹きつけられていった。
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