垂直落下式サミング

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN END OF THE WORLDの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

1.5
前編以上に退屈なタネ明かし編。前編では強烈なカタストロフが描かれていたが、この世界の真実が明かされる後編は、登場人物たちによる台詞のやり取りの分量が多くなり、モンスター映画らしい面白さが薄まって、さらにつまらなくなった。
いろいろ言われる映画だけど、僕は我らが町山智浩先生による脚本が一番の戦犯だと思う。残念ながら。予算の都合やらなにやらでリライトされたであろう細々したところじゃなくて、テーマの根幹となっている思想性みたいなもんが、青くて凡庸でダサいってなわけで。
壁に依存した奴隷として生きるか、力を得て外の世界と戦うか、一昔前の学生運動かぶれと、バブル景気のイケイケが抜けきらない奴が考えたみたいな、しょうもないおはなし。
原作は、これよりもさらに深くて練らていて多様で、ひとつひとつを論ずるに値するような思想をいくつも提示していて、それがドラマのなかで上手く語られていたと思いますけども、原作の解釈の表面的なところだけを抽出しちゃってるんですね。ありきたりでつまんない上に、「イマドキの若者は~」系の説教しちゃってる。これじゃあ刺さりません。
降板しちゃった中島哲也監督版は、現代日本に巨人が現れるっていうストーリーで進めてたそうな。漫画が完結した今となっては、現実と地続きの世界観はけっこうアリなんじゃないかなと。
原作のほうは無類に面白いんです。漫画『進撃の巨人』の大きな魅力は、残酷な世界観や不気味なプロポーションをした巨人のビジュアルを中心に語られがちだけど、ここまでのヒットコンテンツに登り詰めたのは、やっぱりストーリー進行や人間ドラマがよく練られてるからだったと思う。
特に、中盤の内ゲバ編からの大きなタネ明かしがいくつも連続するのが面白すぎて、「人智を越えた怪物が攻めてくる」みたいな基本設定だけ模倣した後発の類似商品が、この骨太さに追い付けずに次々と駆逐されていったのが爽快だったことを覚えている。どうかね、テラフォーマーズさーん。火星は冷えてるかー。