殺伐とした世界観。破滅へ向かうと分かっていながらブレーキは壊れたまま転がって行く。これは明らかに復讐に向いてない男による全く鮮やかではない復讐劇だ。『グリーンルーム』を撮ったジェレミー・ソウルニエ監督作品。バイオレンスの中にも美学があり、グロさよりも血の色や死に際のリアルさが妙に生々しい。ストーリーはシンプルイズベスト！復讐の一点突破だ。人を殺すことを躊躇わない人間なんて普通はいない。そんな人間の弱さを克明に描き出した作品でもあった。
髭もじゃでホームレスのような風貌の男ドワイト。彼は両親を殺されて以来自堕落な生活を送っていた。だが、彼はある日、両親を殺した犯人が釈放されたことを知る。ドワイトは反射的に犯人のもとへと車を走らせ、衝動に駆られた挙句、惨殺してしまう。だが、今度はドワイト自身が復讐のターゲットとなり、追われる身に。姉に危害が加わることを恐れたドワイトは姉家族を遠くへと避難させ、自らは犯人の家族皆殺しの復讐へと突き進んでいく。
ジャケだけを見ると、ホームレスのような男が縦横無尽に復讐を完遂していく話かと見紛いそうになるが、そうではない。ここには悩み苦しみながら、復讐という最悪の選択肢を取るしかなかった悲しき主人公の叫びが詰まっていた。そのため、復讐もなかなか上手くいかない。銃は命中せず、脅迫しようとした相手からは返り討ちを食らう始末。そんな人間味溢れる主人公にハラハラさせられながらも、怒涛のラストまで一気に駆け抜ける！90分という尺にピタッとおさまるまとまりの良さ、まるでセンスの塊のような作品だった。
