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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.6
 古代エジプト、美しく気高い女王アマネット(ソフィア・ブテラ)はファラオから次期女王の座を約束されていた。しかし彼女に弟が誕生したことで全ての流れが変わる。王様の子孫を産めなくなったアマネットは絶望感に苛まれ、死者の書の妖術を使い、死の神であるセトと契りを結ぶ。彼女の身体中にみるみるうちに浮かび上がるルーン文字のような黒色の斑点、生まれ変わったアマネットは父親ファラオと弟を殺害、それを知った配下の者たちの矢じりが首に刺さり、生きたまま極刑を受ける。生身の身体を押し込められた棺桶に封印され、絶叫の元に生き絶えるアマネットの姿、しかし彼女の魂はその後数百年の歴史を生き永らえていた。一方その頃、イラクの武装地帯、アメリカ軍の関係者であるニック・モートン(トム・クルーズ)は砂漠の地で双眼鏡を覗きながら、敵軍の様子を伺っていた。隣に佇む相棒のクリス・ヴェイル(ジェイク・ジョンソン)は危険な賭けに乗り気ではない。ニックとヴェイルは米軍関係者でありながら、戦地で貴重なお宝を誰よりも早く手に入れる危険な「トレジャー・ハンター」として裏稼業に精通していた。援軍のヘリ攻撃により、間一髪砲撃を免れた2人は屋根の上で高笑いを浮かべるが次の瞬間、イラク人のアジトはゆっくりと倒れ、砂の中に巨大な地下空洞を発見するのだった。グリーンウェイ大佐(コートニー・B・ヴァンス)に説教され、2人はエジプト考古学者のジェニー・ハルジー(アナベル・ウォーリス)と共に地下空間へ侵入する。

 ユニバーサル・ピクチャーズが放つ『ダーク・ユニバース』シリーズの記念すべき第一弾。ミイラ、狼男、透明人間、半魚人、フランケンシュタインなどの怪奇系モンスターを次々に生み出していた戦前のユニバーサル映画を21世紀にアップデートする企画の冒頭に選ばれた物語は、「トレジャー・ハンター」たるモテ男ニック・モートンの動きを明らかにしながら、やがて女王アマネットとジェニー・ハルジーとの時空を超えた3D的な三角関係に縺れに縺れる。PTAの99年作『マグノリア』を除き、これまで完全無欠なトム様の姿しか見せてこなかったトム・クルーズの心底クズなコソ泥っぷりや、人知を超えたモンスターに触れる恐怖はトム・クルーズ信者の私にとっても新機軸だった。『ミッション:インポッシブル』シリーズのベンジー・ダン(サイモン・ペグ)のようなコメディ・リリーフを担う男としてヴェイルが登場するものの、中盤に哀れな最期を迎えてからは、主人公であるトム・クルーズが悲劇と喜劇の両翼を担うことになるのが、今作に限ってはトム様にとって最大の成果のようで誤算だったかもしれない。今回は鍛え上げ隆起した上半身だけに留まらず、下半身さえも惜しげもなく披露しているのだが(一応隠れてはいる)、問題は「呪い」という絶対に映像には定着し得ない抽象概念をクライマックスに持って来たアレックス・カーツマンの英断の成否に尽きる。

 これまで紋切り型のスター映画の主演ばかりだったトム様十八番の骨を断つようなアクションを禁じ、深層ではなく表層が立ち昇るクライマックスは激しく賛否が分かれるに違いない。古代から鬱屈した思いを抱えたアマネットのミイラ男ならぬミイラ女という新機軸を描写するにしても、ラストの展開は光量、演出ともにあまりにも暗く、要領を得ない。この後、クランク・イン前のハビエル・バルデムのフランケンシュタインやジョニー・デップの透明人間を束ねる存在として、今作における「プロディジウム」の長の存在が一気にフィーチャーされるのは明らかだが、『マーベル・シネマティック・ユニバース』や『DCエクステンデッド・ユニバース』のその後を知っている我々にとっては、とりあえずの序章となる今作の出来に、フランケンシュタインや透明人間など、二の矢、三の矢にも否が応でも期待が高まる。登場人物たちの哀しみにはフォーカスせず、トム様の見せ場もことごとく踏み外した多分に自己紹介的なシリーズ第一弾である。
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