TAK44マグナム

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.3
危うし!ダークユニバース!


ユニバーサルスタジオが往年の人気モンスターたちを一堂に蘇らせ共演させるプロジェクトである「ダークユニバース」。
MCUがうまくいったので、二匹目のドジョウ狙いの実に分かりやすい企画ですね。
そんなダークユニバースも一作目となる本作から既に暗雲立ち込め、その展望は明るくありません。
早い話がいきなりの大ゴケ!
一部の国ではヒットしたみたいですけれど、やはり北米での興行収入が重要ですし、評価自体が芳しくないとくればプロジェクトそのもののテコ入れが必要になってくるわけでして、今後ダークユニバースがどんな形で継続するのかまだ分からない状況。
雄々しいロゴまで作っちゃったのに、虚しい!
なにしろ、本作の監督からして既にプロジェクトから逃げ出してますからね。中心的プロデューサーでもあったのに・・・。
まさしく、沈む船から何ちゃらってやつですよ。

ダークユニバースは、ジョニー・デップやラッセル・クロウなど、そうそうたるスターが大集合するはずでしたが、どうなることやら。
そして、「ミイラ再生」のリメイクとなる本作の主演は、スター中のスターであるトム・クルーズ。
敵となるミイラ王女を新進気鋭のソフィア・ブテラ、そしてベテランのラッセル・クロウがジキル博士役で共演という鉄壁の布陣。
なのに何故コケたのか?

ひとつは、世間がそれほどユニバーサルモンスターというものを欲していないってのもあるんじゃないですかね?
そもそも、ルーク・エヴァンスの「ドラキュラZERO」が第1作目だったはずなのにコケたから外したわけで、そこからして「今更ドラキュラ伯爵やフランケンシュタイン?」といった空気があるような気がします。

それでも映画自体が面白ければ、受け入れられたはずです。
そこで、最初から期待しないで観てみました。
すると、そこそこは面白かったんですよね。
でも、あくまでも「そこそこ」。
ダークユニバースなんてブチ上げちゃって、しかもトム・クルーズ主演ということで自然とハードルが上がっちゃっているわけじゃないですか。
それと、過去のヒット作である「ハムナプトラ」のリメイクでもありますからね。
なので、よほどの面白さでないと、そりゃあ目の肥えた現代の観客は納得しないですよ。
これが20年前の映画ならいざしらず、いまじゃ似たような大作が一年に何作も公開され、それこそマーベルやDC、更にはレジェンダリーのモンスターバースなどがひしめきあい、噂だけですがトランスフォーマーやG.I.ジョーもユニバース化するかもと言われているぐらいですから、相当の覚悟をもって臨まないと埋没してしまうのは当然でしょう。
ユニバーサルは、そこらへんの見通しをかなり甘く考えていたんではないか。
スターを配すれば客が入る時代は終わったんですよ。
マーベルだって、スターウォーズだって、そこからブレイクしてゆく俳優さんがほとんどです。
何作も連作するならするで、その世界観を任せられる次世代のスターを、まず起用するべきだったと思います。
トムが悪いわけじゃなくて、50代のスターに任せる役では無かった。
その証拠に、トム自身、近年で珍しいぐらいに役どころを掴みかねているのが素人目にも分かります。
たぶん、キャラクターがトムに合っていないのも理由のひとつじゃないですかね。
大体、この主人公が一体どういう人間なのかよくわからないまま物語がすごい勢いで動き出してしまうので、観ていて座りが悪いったらありゃしません。
無鉄砲なのは分かりますが、どのぐらいの善人なのか測りあぐねてしまう感じがします。
一度、命を助けられたヒロインが「この人は完璧に善人」みたいに勝手に善人認定をしますけれど、それを決めるのは観ている我々なんですよ。
主人公の行動や言動から我々がそれを決めるのが普通です。
だけども、この主人公は途中まで一体何考えているのかよく分からないまま事件に巻き込まれ、中盤からはヒロインへの愛が行動原理になってゆきます。
でも、ヒロインと一夜を共にしたというのは冒頭にセリフで語られるだけでドラマ的に体感できないし、なんだか突然、至上の愛なんだと強引に話を動かそうとするものだから困惑する他ないというか。
しかもミイラ王女と三角関係みたくなるのが、わざわざミイラを女性設定にした利点のような気がするのに別にそこまでそれがフィーチャーされてる気配もなし。

また、見せ場のアクションも次から次へと矢継ぎ早に繰り出されるのはテンポが非常に良いのですが、そのどれもが新鮮味が薄く、メインディッシュになりえるものが見受けられません(唯一、バスにスッポリ入るところは笑えた)。
はっきり言って、前菜しか出てこないコース料理みたい。
これは致命的で、たぶん観客のほとんどは「ミッションインポッシブル」のトム・クルーズの映画ということもあって、どうしたってアクション大作だというイメージで観てしまいますよね?
しかし細切れの見せ場らしきものが延々と続き、その先の肝心のクライマックスではトムが一方的にやられ続け、大きな伏線もないままに逆転し、その逆転劇そのものも非常に地味ときたらどうです?
つまらなくはないにしても、喜んで劇場を後にできるとは思えません。
要するにアクション大作としては、中途半端で微妙な出来映えなんです。
同じロンドンが舞台なんだし、最後ぐらい「スペースバンパイア」みたいに派手なディープキスで締めてくれれば、溜飲もまだ少しは下げられたのになぁ・・・(苦笑)

大体、基本的にホラーなんだから、もっとホラー色を強くすればまだ救いもあったかもしれないのに、本当にどっちつかずで「バイオハザード」シリーズよりも思い切りが悪い。
博士がハイド化する件りも、もっと面白くできそうなんですけれどね。ダークユニバースの核となる人物なのに、この人もよくわからないまんま終わってしまう。

せっかくの大プロジェクトだし、楽しみにしているファンも世界中に大勢いるわけで、その滑り出しとなる一作目からして無難にいこうとして失敗しているのはかなり悲しいです。
もっと慎重に練ってから、次が続くのであれば(「フランケンシュタインの花嫁」らしいですが、これも既に製作が一時延期されています)現代に合った物語とキャラクターで魅了させて欲しいと思います。
ラストのトムの疾走は、これからを期待させるものでした。
超人となったトム・クルーズ、ラッセル・クロウのジキルとハイド、ジョニデの透明人間、ハビエル・バルデムのフランケンシュタイン・・・
一堂に会したモンスターチームを是非、スクリーンで魅せて欲しいものですね。


アマゾンプライムビデオにて