夜飯

おんなのこきらいの夜飯のネタバレレビュー・内容・結末

おんなのこきらい(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

女の子ならめちゃくちゃ分かる映画だと思う。女の子ならではの真理みたいなのがたくさんあった。

映像自体すごくそこを重視していて、かわいいものをかわいく映すときと敢えてそう見えない風に映してるのが印象的だった。上司とキリコの髪型を酷似させて並べたり、キリコに寄ってくる男が本当にどうでもいいメンツだったり…、映像とことん拘ってる気がしてよかった。
キリコが男に対して計算しているであろう、あからさまな露出と華奢に見えるようなどデカいバッグ…とか小物もしっかり固めてあってよかった。

女しか分からないであろう、自分よりも芋でサバサバ気取ってる女に好きな人をとられる腹立たしさとか、片思いの相手の本命が非の打ち所のない真面目で清純な女だとか… 設定が絶妙なチョイスすぎて死んでしまう。

キリコのゴリゴリ価値観を人にぶつけてしまうのもそうだけど、全体的に登場人物の視野の狭さがすごい。かわいい女の外見あってこそ論とそうじゃない女の中身あってこそ論とか。俺は違う、私は違うパレードもすごかった。みんな未熟で立派な人は1人もいなかったのも人間くさくていいけどね。キリコを救ったコウタも結局は彼女とキリコ両方を傷つけてしまったわけだし。不器用だね。

ラストについて、ちょっとモヤっとするけどまあアリなのかな。キリコの当初持っていた「私はかわいい」とラストの「私はかわいい」は違うと思うし。他者と比べて優れている自分が可愛いっていうのではなく、着飾らない自分自身も自分が可愛いと思えるようになったってことかな。可愛い以外になんにも持ってないことに気づけたのも大きいし、そこで絶望せずに「でも私はかわいいしな…」って自分を愛せたのは素敵。
コウタにぶちまけてたけど、キリコは自分自身が面倒臭いことをよく知っていて大嫌いだったわけで、他人から肯定されないと自分には価値がないと思ってたんだよね。だからこそ可愛くいなきゃいけないと思うし、そうやって必死に自分の価値を守ってることを蔑まれたり、その努力をしない女の子が嫌いで仕方ない。タイトルにもある「おんなのこきらい」はそういう周りの女の子嫌い!もあるけど、でも1番は自分の中の女の子が嫌いってことなのかな〜…。「女の子の生きる価値は可愛さ」っていう冒頭の台詞、まんまキリコを縛る呪いそのものだったから。その呪いを解いてくれたあとに見せつけられた茜ちゃんの彼氏の軽薄な「可愛い」はマジで気持ち悪かっただろうね。所詮男と女、所詮外見ってまた見せつけられてしまったからコウタのところに行ってもう1回呪いを解いて欲しかったキリコに見えた。自己解釈しすぎかもしれない。

あと本当に森川葵の演技がとてつもなく素晴らしくて。声のトーンとか表情の作り方とか身近にいたらマジで女から嫌われる女だし、それでもやっぱ顔面可愛いな…となる塩梅がうますぎる。脚本は好きだけど役者が棒すぎたり、ぎこちない映像があったり(特にラブシーン)あったけど、森川葵主演のおかげで救われてるところがでかい。ファンタジーとリアルの狭間みたいなキャラクターがよかった。

刺さる人には刺さる映画って感じ。わからん人にはなんにも分からないだろうけど、これを見て泣く女の子たちは確実にいる。
予告の通りのストーリーだけど安直すぎなくてよかった。
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