近未来で争いなど無くすため、投薬で感情や感覚を抑制し、いくつかの決まりごとを忠実に守ってきた"コミュニティ"
職や家族でさえ決められて生きていくその中で1人の青年が特殊な役割の任を受けるというお話。
今作もそうであるが、昨今の映画などで見られる近未来像というものが
ド派手なものからどシンプルなものへと変化している。
よりシンプルなものを追求したスティーブジョブズの影響も多少はあるのかもしれない。
昔とは格好良さの感覚が異なってきているのか。。
さて本作では、倫理と人間性を極端な方法で表現しているが
それ故に無理も見える。
飢餓や戦争など人類の危険に及ぶ物があるなら
その原因を消し去ろうという考えの人々が描かれており
差異を極限まで減らそうという方針のもと生活している。
作中では見た目の差異を排除するため人間の色彩能力を無くし
全てがモノクロに見えるという設定があるが、どうにも無理がある。
全ての人間の視力を操作できるほどの未来なら見た目を統一することのほうが簡易的ではないか、など。
どうしても気がかりになる設定が多すぎるのが今作の印象である。
さらに気になる点が。
コミュニティの人間は感情を抑制するためこの世界に起きた出来事などを知らない。
主人公は唯一それを知る事が出来る役職に就き、この世界の過去についてや動物についての記憶を見せられるのだが、
この記憶の映像というのが
今の私達の現代の映像や更に古い戦争の映像などなのである。
このような記憶をどの様に再現しているのか、それくらいの説明はあってくれないと親切でない。
だが、それくらいは見逃せとでも言わんばかりに
その辺りはスルーされてしまう。
この映画に関しては技術力の説明が一切無い。何かしらの説明がなければ説得力が無くなるだけではないか。
"記憶の解放"という行為も必要なのかよく分からなかった。
あくまでも他人の記憶だろうに。
全員にノンフィクションの本や映画を見せれば良いだろうに…
設定に無理があり過ぎて鑑賞中も余計に考えてしまう。
テンポも良く内容も惹きつけられるので
もっと設定に意識がいかないような工夫などあれば気持ちよく観れたかもしれない。
ただ"殺人"という言葉すら無い世界でも
"解放"の矛盾さに気付けないとなると動物的本能すら無くなっているのではないか、
など
倫理についてかなり考えさせてくれる世界観や設定はやっぱり好き。
何十年後かにリメイクされてそうな内容。
途中赤ちゃん死ぬやろというシーンが連発でツッコミどころ満載。
終盤の赤ちゃんとの散歩をカットして
"よそ"には何があるのかをきちんと見せて欲しかった。
『謝罪を受け入れます』