Kaoru

多様な目のKaoruのレビュー・感想・評価

多様な目(2013年製作の映画)
3.6
イタリア映画祭にて鑑賞。

実体験の中から自分と深く向き合い何度も何度も考え抜いてひねり出された言葉はどうしてこんなにも聞き手の胸を打つのでしょうかしら。

10人の視覚障害者がただただひたすら自分の日常を通じて感じたことを語っているドキュメンタリー。目の見えない人の話なんて、目の見えた日々から事故などの転落、そして幸せを見つけるという作品が多い中で、この作品は全然違う。ここに出てくる人たちはとっくのとうに目が見えない状況を受け入れてしまって毎日を楽しく生きている。当然監督がいるから様々な指示や指導があったにせよ、全て本人たちの思い思いの言葉で語られる内容に驚愕してばかりだったわ。

チェロを勉強しながらアルペンスキーでメダルを獲ったジェンマは「(点字の本だから)暗い中でも読めるし、車でも酔わない」と笑って言うし、ピアニストのルカは世界中を旅しながら、ひたすら写真を撮り続け(目が見えないにも関わらず!)「視覚が奪われると聴覚が研ぎ澄まされるというけれど、そうじゃなく心が研ぎ澄まされる」と言うし、クラウディオとミケーラは夫婦揃って周りの人が好奇の目を向けてくることを笑いながら話す。なかでも彫刻家フェリーチェが指の感触ひとつで大理石から人を生み出す凄技に感動しないでいられなかったわ。

お涙頂戴はなし、気の利いたストーリー展開や面白さはなし。多くを語るほど親切な監督ではないけれど、全てリアルにいきている人々の日常と言葉ということに感動です。