Azuという名のブシェミ夫人

コングレス未来学会議のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

コングレス未来学会議(2013年製作の映画)
3.6
ずっと気になっていた作品。
実写とアニメーションで構成された不可思議な世界。
空想的ではありながら、人間のえぐ味みたいなアクの強いリアルさを見せつけてくる。

女優ロビン・ライトを演じるロビン・ライト本人。
作中でボロクソに言われてるのだけれど、よく出演されましたね。
私はこの人の年の取り方好きです。
いぶし銀なハーヴェイ・カイテルも素敵だし、サミ・ゲイルちゃんとコディ・スミット=マクフィーは本当の兄弟みたいで可愛い。

人間が役を演じる時代は終わった。
俳優を姿形から感情まで全てサンプリングしてCGキャラにする。
でもそうして出来あがったキャラクターというものは、それ以上にもそれ以下にも成りえないわけで、劣化しないのとまた同様に成長も熟成もされない。
それってやっぱり別物。
だって人間は常にフラットではないでしょう?
例えばその日の朝ニュースを観た時に思ったことや、家族や他者との会話から生まれた感情、俳優ならばその台本や監督の思惑などから派生してくる演出などからも、その人が“いまこの瞬間”をどう生きるのかは変動し続ける。
そういった瞬間の積み重ねでその人はその人であり続けるし、それがその人の魅力となっていく。
スキャンされるロビンは、「今まさにCGにされようとしているロビン」でしかない。
こうすることで救われるだと?
そんなのまるで生きたまま殺されているようでしょう。
(なんだか安部公房の「R62号の発明」が頭をよぎる)
でもこのスキャンするマシンの造形は凄く美しかったけど。

荒野は大海となり、船やクジラが横切っていく。
それはやがて雲海となり、奇想天外な街が唐突に現れる。
シュールで愉快、バッドトリップみたいなアニメーションの世界はとても面白かったし、実写⇒アニメ、アニメ⇒実写の切り替えの瞬間が上手い。
ホテルの自動音声にさらっと言われた『究極的には全てが気のせいです』って言葉が妙に印象的。
そしてボブ・ディランのforever youngをロビンが歌うシーンがとても素敵だった。
永遠に若く…か。それは見てくれの話じゃない。若くあるのは精神だけで良いよね。
体が老いていくことを受け入れつつ、幸せを過去のものにしないことかなって。
よく子供を見て『今が一番可愛い時だね』みたいなことをいう人がいるのだけれど、ピークなんてものはね、常に変化して更新されていくものだと思うのです。
歩けるようになった、喋れるようになった…大人に近づくにつれて劇的な変化が見られないだけで、人は常に変わっていってるし、その瞬間ごとに違った輝きがある。
明日は、来月は、来年はもっと素敵かもしれないじゃない。
もちろん現実はいつもそう楽しいことばかりではないけれど、生まれもった個性で、なにを理想とし、なにを幸せとするのかは己次第なのだと思う。
だから、私は私であることを諦めたくはないなー。

May your heart always be joyful
And may your song alwaysbe sung
May you stay forever young

子への親の愛は永遠なのね。