ササキ・タカシ

ササキ・タカシの感想・レビュー

コングレス未来学会議(2013年製作の映画)
4.0
アリ・フォルマンは次回作が楽しみな映画監督のひとりになった。本作といい前作の『戦場でワルツを』といい、実写とアニメーションを使い分け、見たこともないような幻想的な、というか幻覚的な、悪夢のような映画をつくる尖った才能の持ち主だ。現実、夢、記憶、妄想、バーチャルをカオティックに描く手腕から、今敏の後継者と言ってしまってもいいくらいに思う。

本作がどういう映画かを一言で語るのは難しい。一番雰囲気が良くわかるのはUK版の予告編(https://youtu.be/1byeYnPQob4)か。序盤はデジタル化していくハリウッドと落ち目の女優を皮肉った物悲しいブラックコメディと言った感じで、結構誰でも楽しめる話になっている。でも中盤以降、どんどんとはっきりと見る人を選ぶ作風になっていく。端的に言えば、SFバカが作った映画だ。原作がスタニスワフ・レム(『惑星ソラリス』とかの人)のSF小説なんだから当然と言えば当然なのだが、マトリックスの2と3を見て「なんのこっちゃ意味わからん」みたいになっちゃった人にはまずキツい。自分は率直に手塚治虫の『火の鳥』を連想した。描かれるアニメーションも大昔のディズニーやフライシャーのサイケデリックな部分を抽出したような映像で、最初こそ刺激的で楽しいもののずっと見せられるとさすがに胸焼けをおこしそうになる。現代音楽家のマックス・リヒターが担当した劇伴は美しく、終盤の終末ムードが漂う展開と相俟って心地よい眠気を誘った(←褒めてる)。

これは10年後20年後に好事家たちによってだんだんと愛されていくカルトな作品になるんじゃないだろうか。いつの時代に鑑賞したとしても、他にはない特異な違和感を味あわせてくれる素晴らしい映画なのではないかと思う。

しかしいくらなんでも、トム・クルーズの歯が白すぎやしないだろうか。