リッキー

ドリーム ホーム 99%を操る男たちのリッキーのレビュー・感想・評価

3.5
1008本目。190511
「方舟に乗れるのは1 %の人」
先日鑑賞した「カンパニーメン」はリーマンショックによる企業のリストラを中心に描いていましたが、本作は一般市民の生活破綻を描いています。リーマンショック後、アメリカでは多くの人が住宅ローンを支払えず、自宅を差し押さえられ大きな社会問題となりました。この事実をもとに描かれた本作は、冒頭から衝撃的です。家族がどんなに懇願しても「立ち退くか刑務所かを選べ」と言い放ち、家財を無情に建物外に運び出すシーンには、茫然としてしまいます。実際に同様のことが220万世帯分もあったことを思うと、当時のアメリカ国民はこんな状況だったのかと恐ろしさを感じました。

シングルファザーのデニス·ナッシュ(アンドリュー·ガーフィールド)は、住宅ローンが払いきれず、長年暮らしていた家を強制退去させられます。不況のあおりを受け、仕事のない彼は、自宅を差し押さえた不動産ブローカー社長(マイケル·シャノン) と手を組み、巧妙な手口で銀行や政府、 自分と同じ境遇の人々から家を奪っていきます。彼らは「 1%の成功者」というアメリカンドリームを手に入れようとしました。この時のマイケル·シャノンとアンドリュー·ガーフィールドの二人の演技が絶妙で、彼らの行為が正しいのではないかと思わされてしまいました。
やがてデニスは家族に仕事内容を隠していたことや、隣人の不幸の上に自らの成功があることに苦悩し、自らも大きな代償を払うことになります。

毎日の勉学や勤労に集中することができるのは安心して帰れる「家」があるからこそ、という考え方は十分理解できますが、一方で、所詮家というものはただの「箱」に過ぎないという考え方にも一理あり、現に最近では家を持たない「アドレスホッパー」といわれる若者も増えているようです。良い家を購入するためにあくせく働き、いろいろやりたいことを犠牲にするような、あまりにも自宅への執着が強すぎるのも健全ではないようにも思われます。
観終わったあと、自分にとって「家」とは何なのかと深く考えさせられました。
リッキー

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