ヒロ

何故R氏は発作的に人を殺したか?のヒロのレビュー・感想・評価

3.7
タイトルにもあるように“R氏が人を殺す”という事象に向かって、彼の孤独や疎外感を(ほぼ)ワンシーンワンカットで羅列していく。やっていることはハネケの『71フラグメンツ』と同じで、観客の知的好奇心を利用し、あるはずのない物語性を生み出すことに成功してはいるわけだが、R氏の主観のみで構成された平面的な構造をとる今作は、様々な視点を織り交ぜることによって可能になる立体感とメディアまでこき下ろす神の視点とでも言う上から目線を併せ持つハネケ作品には到底及ばない。
ただ、R氏が家族を蝋台で殴り殺している最中にテレビから不意に流れてくる「stand by me」の破壊力は凄まじい。

ファスビンダーがテレビをやる前の、観客を無視してぶっ飛ばしていた初期作品の良い例。
“分断された部品の構築物”としての映画。
ブレヒト的。

《ニュー・ジャーマン・シネマ回顧》
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