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アメリカの兵隊のkkmovoftdのレビュー・感想・評価

アメリカの兵隊(1970年製作の映画)
3.2
ファスビンダー映画には社会的なものであれ私的なものであれ、人と人の間には力関係がある。本作はファスビンダーがいた劇団アンチテアター名義で制作された、割りと後期の作品。初期のギャングもの「愛は死よりも冷酷」「悪の神々」よりはストーリーの構図がしっかりしているが、その分本作の主人公は社会的な力関係に徹底的に絡み取られていると思う。

ファスビンダー映画の例によって物語は淡々と進むが、随所に挟まれる老婆と外国人労働者の話(後作「不安は魂を喰い尽くす」の元アイデアだろう)や別れの電話を終えて自死する女性などの演出が、平坦に流れる時間の密度を高めている。唯一ラストシーンだけが情感たっぷりのスローモーションだが、これも異常な程長く続けることでドラマチックというよりは不思議な余韻を残す。

ファスビンダーが言うアンチテアター内部での製作からより一般的な方法論での映画製作への変化の、過渡期的な作品だと思う。
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