むさじー

黒の魂/黒い魂のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

黒の魂/黒い魂(2014年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

<マフィアの抗争に巻き込まれた農民の慟哭を描く>

息詰まる緊張のラスト30分の衝撃が凄い。
かつて父親を殺され、今度は弟(三男)と息子を失い、自分の血を呪いながら、いま闘いに臨もうとする二男を射殺する、その決断に至る心理描写が重く、切ない。
跡取り息子を失った絶望と、平和な暮らしを奪ったマフィアそのものへの怒り……その自暴自棄のはけ口は、弟やその仲間に向けられる。
やられたらやり返す、マフィア同士の争いはどちらかがつぶれない限り終わることはなく、平和な家庭は壊され、裏切りは続く。
自分たちの組織が無くなれば争いも消える、それが苦渋の末に至った結論だった。
組織間の抗争という無限ループから抜け出したい思いと、家族を失ったその怒りの矛先が身内に向かってしまうやり切れなさが、この冷酷非情な銃撃によって、彼の慟哭であるかのように伝わってくる。
マフィア同士の抗争を描きながら、何よりも平和を望む農民目線を崩さない描き方をしていて、それがラストのメッセージにつながっている。
しかしながら、クライマックスに至るまでの展開が地味過ぎる上に、すぐには登場人物の関係性や、ファミリーの背景が呑み込めないので、かなり辛抱を強いられる映画である。
渋く暗く重い、一般受けしそうにないが、観終わってみると凄い人間ドラマであることを実感する。
むさじー

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