YasujiOshiba

黒の魂/黒い魂のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

黒の魂/黒い魂(2014年製作の映画)
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シチリア祭り(番外編)

見逃していた作品。ベロッキオはこの映像をみて、『シチリアーノ』の撮影のために、ヴラダン・ラドヴィッチを呼んだという。なるほどよい。冒頭のアムステルダムのシーンなんて、はっとさせられる光と構図。カラブリアの陽光。夜のコントラスト。夕方のオレンジの街灯。朝方のブルー。蝋燭のゆらめき。屋根のない教会の明暗。

ヌドランゲタの話として見るのではなく、カラーブリアの兄弟たちの話として見事。問題の核心はおそらく「わたしの血」という呪いなのだ。その呪いは、言祝ぎや絆でもあって、だからこそカラーブリアの牧夫に嫌気がさした若者が、自らの解放と言祝ぎを求めて、その絆を頼って北上するのだ。

しかし、それはあくまでも呪いであり、呪いの連鎖であり、そのもはや解きほぐすことのできないほど絡まってしまった魂こそが、この映画の主題ということになるだろうか。

だからこそ、ラストのあの思いがけない銃声が響き渡ったあとで、あの浜辺の、穏やかの山羊の放牧のシーンをぼくらは目にすることになる。あの裏切りの少年も、まるで裏切りこそが正義であるかのように、あるは裏切りそのものがなかったかのように、笑顔で手をあげるとき、そこにはもしかすると、常にすでに失われてゆく、小さな集落の、小さな幸福のありようが写し込まれているのかもしれない。
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