『戦争を俯瞰(ふかん)で見る。』
その一言に尽きる静かな映画。
個人的に大好きな映画10本の指に入るだろう“ガタカ”の監督が撮った、これも大好きな俳優の1人であるイーサン・ホーク主演の映画。
まさに、近代の戦争は、戦地ではなく、地球を半周分離れた一室で、クリック一つでミサイルを発射して空軍兵が闘う。戦地で恐怖も味合わなければ命を失うこともない。リモートコントロールでミサイルを打つ兵士の、戦地での闘いとは異なる苦悩を描いた作品である。
とにかく、静か。
社会派の戦争映画ではあるが、TVゲームの画面に向かうように、ミサイルを打つのもクリックのみである。ただひたすら、クリックをする空軍兵役のイーサンの表情が悲しい。
元々、イーサン・ホークという俳優さんは、表情豊かにコロコロ変えて表情やキャラクターを作るのだが、本作は徹底して、無機質で生気のない兵士を演じている。
どこまでも憂鬱で、どこまでも深い苦悩が、その佇まいに現れていた。
正直、映画前半は、『えー、なんか抑揚ないけど大丈夫?』と思ったが、後半に連れて、本作の良さがだんだん理解できた。
戦争映画ではあるものの、余計な演出や編集を行わないため、過度な色付けがない。
淡々としていて、兵士のありのままをテキストに起こしただけのような気さえしてくる。
しかし、その過剰な演出の無さが、ドローンを用いた戦争の乾いた虚しさを表現しているのであり、現代を生きる私たちに、問題を提起させるようだ。
ドローンでミサイルを発射すると、血が流れているのに、その血液の色や温度を感じない。まさに、俯瞰で戦争を見ることの、例えようのない恐怖である。
乾いた黄土色のアフガンを上空から俯瞰で眺める映像と、ベガスの郊外に住む兵士である主人公が家族と住む家を俯瞰で眺める映像。
対比させた映像が、近代戦の空恐ろしさを感じさせる。