緩やかさ

キャロルの緩やかさのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
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終始抑制したトーンで純度の高い恋愛を繊細に描いている。
決壊し溢れ出る感情のダイナミズム。

原作小説は1952年の刊行とのことで、かなり先鋭的だったのでは。

よく映画で見る1970年代のマンハッタンには猥雑なエネルギーを感じるが、
本作で描かれる50年代のニューヨークは静謐でモノトーンな印象。

二人の出会ったデパートの売り場がノスタルジックで印象深い。

モノトーンの街並みでキャロルの纏う鮮やかなファッションの美しいこと。

建造物や自動車などの美術も楽しい。

冒頭のカフェのシーンの時制が劇中で不明だったのが、終盤にわかるのも効いている。

一人娘の親権をめぐるキャロルの身を切るような判断が痛ましい。


恋が育っていく過程でずっと悲しい予感がついて回っていたから、
ラストシーンの、二人の微細な表情の変化、それが幸せなサプライズだった。


あとタイトルバックとエンドロールが史上稀に見る地味さ(好き)。
緩やかさ

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