ミーハー女子大生

キャロルのミーハー女子大生のネタバレレビュー・内容・結末

キャロル(2015年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

期待しすぎたかな。
観賞後に読んだ原作はすごくよかった。
映画でも少しだけ使われていたけど、テレーズへ宛てたキャロルの手紙は素晴らしい。
心に沁みて思わず落涙。
原作おすすめ。

映像は美しいけど、お話にいまいち乗れず。
テレーズの部屋を訪れたキャロルがいきなり泣いて終わるシーンや、娘と別れるときの涙、テレーズが恋の始まりと終わりに流す涙とか、安易に涙で語りすぎというか。
メロドラマ的で共感しやすいけど白けてしまった。

旅先で食事中のキャロルとテレーズに怪しげな男が声をかけ相席するシーンがあった。
男は当然ながら怪しまれ盗聴発覚シーンへとつながるわけだが、なぜ尾行中の探偵が怪しげな態度で調査相手に接触し名前まで明かし詮索するのか。
キャロルは「あの時の男!」と気づくけど、火サスでも見ないような茶番であった。
アート系文学作品風だけど語り口はかなり露骨であけすけだったと思う。

キャロルと別れたテレーズが部屋の壁を塗り替えているのは、自分の心も塗り替える再出発の意味があると思うけど、心情描写も露骨な印象。
決められたレールの上を走り続ける電車の模型とカメラマンに憧れながらデパートで働くテレーズを重ね合わせたり。
キャロルと元恋人アビーの過去も全てセリフで説明するけど(結ばれた日のことまで語る)、表情や仕草、言葉の断片から背景を察する、そんな語り口を期待していたので残念。
それと禁断の恋とはいえテレーズは恋をしているのに笑顔が少なかったかな。

さらにしっくりこなかったところ。
イブの夜、夫が娘を連れ去るシーンでキャロルが流す涙はいささか過剰にみえた。
1日の別れが親権を奪われたような涙。
夫の無理解を描き孤独なキャロルを追い込み葛藤させる。
そんなシーンだと思うけどセンチメンタルがすぎるというか、夫を悪として描きすぎというか・・・。
それにここでは涙を見せない方がテレーズの部屋で思わず流す涙が生きると思った。
涙の理由は同じなのだから。
夫婦の対立を見ていたテレーズも帰りの電車で泣くしね・・・。

それと同性愛が原因で親権を奪われそうな時にキャロルがテレーズと旅行に出かけるのもよく分からない展開だった。
覚悟の上の旅行かなと思ったけど、案の定というか、親権を得るためふたりは旅先で別れることになる。
その別れ際にテレーズが「よく考えずあなたを受け入れた私が悪い」と言うのも理解に苦しむ。
テレーズが「今日はスイートルームに泊まろう!」と初めて主張するシーンでの、今夜キャロルを受け入れる!という決意はなんだったのか。
ちなみに原作ではテレーズが自分自身を責める理由は全く違っていた。
というか乗りにくい展開は全て原作改変なので執拗に原作おすすめ。

それでも終盤の展開はよかった。
キャロルは娘(の親権)を捨てテレーズとの愛を選ぶ。
同性愛に厳しい時代背景がそうさせたのかもしれないけど彼女は信念を貫く。
原作では娘ではなくテレーズを選ぶキャロルの決断がより克明に描かれていた。
しかし、テレーズは再会したキャロルを拒絶する。
キャロルの全てを捨てた決意が全く報われないこのシーンはすごくいい。
平静を装うキャロルに痺れます。
その後キャロルと別れたテレーズはパーティー会場で魅力的な女性(明らかに同性愛者)から声をかけられる。
テレーズの新しい恋が始まる・・・。
と見せかけてからのラストシーンは素晴らしい。
テレーズはパーティー会場で全てを悟る。
そして恋は愛に変わる。
エンディングは◎。

同性愛をテーマにした『チョコレートドーナツ』では子供を捨てる母親を悪、同性愛者を正義として描いていたけど、『キャロル』は少数派の正しさだけを主張せずに多数派の無理解を描いていてよかった。
描こうとしていることは好きだけど描き方が本当に苦手だったので☆2.7。

ストーリー 3
演出 2
音楽 3
印象 2
独創性 4
関心度 2
総合 2.7