TakamaruSuzuki

キャロルのTakamaruSuzukiのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.5
1950年代のニューヨークを舞台に、偶然の出会いから始まる女性同士の恋愛を美しく描いた本作。
同性愛の話と聞いていたから、時代も時代だし、割と重たい系なのかと思っていたけど全然そんなことはない。とてもピュアなラブストーリー。

キャロルとテレーズの2人の世界を、鮮やかな色彩の中にどこまでも美しく描いた反面、それ以外は逆に陳腐で、取るに足りない色褪せた世界に描いていたように思えた。個人的にはそこらへんのコントラストが絶妙に感じました。

そして何よりも特筆すべきは主演2人の好演でしょう。特にケイト=ブランシェットは圧巻としか言いようがない。長尺や台詞の無いカットが多い中、細かい感情の機微を見事なまでに表現している。

また、いわゆる濡れ場シーンでも決してヌードを見せない事で知られる彼女は、本作でも明らかに画的におかしい(ルーニーマーラは当然脱いでる)状況になっても一向に脱がない。「おい、役者だろ!そこは脱いどけよ!」と言う人もいるかもしれないけど、余りにもそれ以外の芝居のパフォーマンスが高すぎて、もはや女優としての気高さというか、強さというか、そういう揺るがないものに対する畏怖の念すら覚えてしまった。

全体通じて、面白いとか感動したとか、そういったレイヤーとはどこか違う、何か芸術を見たような、そんな不思議な感覚を覚えた作品でした。
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