本作を鑑賞するということは、映画を観たという表現では収まりきらない。
何というか、その場に居合わせた体験をし、穏やかでありながら溢れんばかりの感情が内に湧いてくる。
そんな体験をした感想は、美しい。の一言に尽きる。
本作では動物やさらには生き物というカテゴライズを超越した人間という種が求める最上位の欲が描かれている。
それも本当に美しく。
ルーニー・マーラ扮するテレーズ・ベリベットは作中で明らかに人が変わっていく。
観ていて退屈な少女(ここがルーニー・マーラの凄いところ)から求めるものに、自らに忠実な女性へと。
静かなる激情が明らかに自己を定義していた。
そしてさらに、ラストシーンと並んでこれが一番の本作の見所となるが、二人の交わりには息をのんだ。
それは本能的動物的な性を思わせることなく(女性だからとかじゃなく)、ただただ美しく、まさに人が内に秘めた欲そのものの体現であった。
人は年を重ねるにつれて自己を認識し、自他の境界をはっきりさせていく。
けれど、それに相反する欲を誰もが孕んでいると思う。
キャロルとテレーズは体を重ねることでその自他の境界をなくし、自己を融合させ、見事にその欲を満たしていた。
だからこそ羨望も相まってこれほど美しく感じたのだろう。
間違いなくベスト映画にランクインする作品だった。
必ずまた観よう。