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キャロルのwigglingのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
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16ミリフィルム撮影の暖かい映像が最高に美味。そして役者二人の力強い演技が冴え渡る骨太なメロドラマでした。

『アデル、ブルーは熱い色』のようなヒリヒリするような話かと思いきや、全く違う種類の痛みの話だった。運命的な出会いで自らのセクシュアリティに気付き、短い蜜月を経て終焉が訪れるというプロットは同じ。だけど、社会背景や語り口の違いによって作品から読み取れるものは全く別物になってるんですね。
同性愛への偏見が根強い社会に屈し自分を偽って生きることは、絶望より虚しく死より惨めだと気付くのが本作の骨子。フェミニズムを描きながら、より普遍的なメッセージを伝えている。

何より心を打たれたのは、キャロルとテレーズが見つめあう眼差しの切実さ。この関係が長くは続かない事を察しているかのような、すべての瞬間を瞼に焼き付けようとするガン見っぷりなんだよね。まるでバトルさながらの。
香水を嗅ぎあってキャッキャウフフするシーンも印象的だった。キスやセックスのような直接的なシーンよりも特別な関係である事を上手く表現してて。

テレーズ役のルーニー・マーラーの事はフィンチャー作品でしか知らなかったので、こんなにフレッシュな演技ができるのかと感心した。フィンチャーの作品って、役者が監督の作家性に負けてる印象が強くて。ケイト・ブランシェットのお姉さまぶりもさすが。

すべてを失う覚悟で妻子持ち男を愛したタレントを攻撃して憂さ晴らししている、すべての可哀想な女性たちに本作を捧げます。
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