いやはや、圧倒されました。しばらく夢うつつ。世界観をこれだけ丁寧に構築されれば、もう後は浸るだけ。撮影、照明、演技、音楽、そして美術!
セット、ロケ、小道具、衣裳、メイク、全て素晴らしい。
『エデンより彼方に』に拍車をかけてとにかく50年代の再現っぷりが凄まじい。何か監督の生き霊のようなものが放出されてるのではないかというぐらい凄まじい。前半のデパートの雰囲気など思い入れなしではああはならない。
トッド・ヘインズという人はティム・バートンやウェス・アンダーソンらと同じく、失われた時代と、きっとそこにあったはずの、というかあってほしいイノセンスに魅せられているのだろう。出世作はグラムロック黎明期を描いた『ベルベット・ゴールドマイン』だし。
愛と憧れ。
ルーニー・マーラも、ケイト・ブランシェットに対し、私の知らない時を生きた人として、憧れと愛情を抱く。それはラブストーリーなら当たり前だけど、監督がお膳立てしたこの「愛と憧れ」の世界においては最大の威力を発揮する。そして何よりも素晴らしいのは、ケイト・ブランシェットをただの憧れの象徴に留めず、ルーニーへのやはり「愛と憧れ」を持たせ、同じ位置に二人を置いたことだろう。だから、切ない。