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キャロルのmoyuのネタバレレビュー・内容・結末

キャロル(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

キャロルのため息が聞こえてきそうな気怠げな目線と色香、テレーズの天使のような無垢な少女性が美しい映画だった。


同性愛の映画で、その要素がない私はいまいちストーリーに入れ込めない部分もあったけど、映画を観終わっても時々ワンシーンや音楽が頭をよぎるのは美しさが印象深かったからだと思う。

キャロルのキャラクターが、ありがちなエキセントリックさや奇抜な行動で周囲を振り回すといったものではなく、あくまで常識の範囲で振る舞い母として娘を愛し大事にしているのが描かれていて安心した。現代の自由な気風では同性愛者を描くとき、ついキャラクターの風変わりな振る舞いや自分の恋のためなら家族はどうでもいいといった表し方をしてより印象性を増そうとしがちだけど、1950年代という、現代より周りの理解が得られにくい、というか批判の対象となりうる時代の中で、出会いから結ばれるまで普通の男女の恋愛話と変わらないように描かれると、慎ましさが際立ちより繊細に映る。

女性同士のベッドシーンはあるものの、嫌悪感は全くなかった。
旅行中冴えない営業マンが登場してなんでここでこのキャラクターを出したのか鑑賞中疑問に思ったけどよもやスパイとは。



最後のテレーズがキャロルと対峙するシーン、ケイト・ブランシェットの表情の演技が素晴らしすぎて鳥肌ものだった。

この時代で生きていくにはストーリーとしては悲劇だが妥当で現実的な道を選ばず、美しいが生き難い道を選んだという無垢な決心がこの映画の絵画だ。
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