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キャロルのEのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
5.0
この映画は、しとやかで、エロティックで直感的。そしてとても情熱的な映画。

観賞後も飲んでもない酒が廻ったように、顔が火照って、何も映らないスクリーンを見つめたまま、僕はしばらく席を立てませんでした。僕はこの映画に"恋"したみたいです。

街並み、劇中歌、演者や展開。なにをとっても申し分ない。いやホントにマジで好き



登場人物といえば、ぼくとつとした垢抜けないテレーズが、洗礼された"大人のオンナ"のキャロルに憧れて、服装や嗜好品を真似てゆく過程がなんとも生々しい。

(レストランで昼間からドライマティーニを頼むキャロルを真似るテレーズは、それがどんな酒か、絶対知らなかっただろうに!)

でも完璧に見えるキャロルも、生きることにもがいてるわけです。それもとてつもなく深い谷底で。二人はなりたい自分になるため、なりたい自分を見つけるために、いくつもの選択を迫られます。

選択するたびに傷ついてしまったり、時にはお互いを傷つけ合ってしまったりもして。

「どう説明したらいいかわからない」とテレーズは言います。ああ、確かに。人を好くも憎むも、言葉よりも先に、直感に気づくことの方が多い気がする。「惹かれる」ものって、総じてそういうものじゃない?

ラストシーンがとても情熱的です。このシークエンスを焼き付けるためにだけにこの映画を見てもいいくらいの。お見逃しなく。
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