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キャロルのcheeeezmのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.8
キャロルがテレーズに対しては常に気高く接しているのに話す内容が強く見えるだけの脆く弱いものであるのが切なかった。テレーズがキャロルを撮って現像するのに共感。美しい人を撮るのは作品として売り出す為でも人に見せる為でもない。その人の儚い一瞬を見た通りに写してくれる手段を、私達は写真しか知らないから。

そしてキャロルがテレーズを「天から落ちた人」と例えたのも美しいと感じた。「この人の儚い一瞬の美をレンズに閉じ込めたい」と思わせる人は、どこか浮世離れしているのに誰よりも弱くて誰よりも人間に馴染もうとしている、と思わせた。

「私達は醜くないはずよ。」キャロルが元旦那に言った台詞が印象的。同性愛がまだまだ認められない時代でも彼女は母として生きている。もっと認められるべきと思う一方、この禁断性がキャロルをより人間離れした世界に近付けているようで、自分の感性を少し呪った。

ふたりが笑い合うシーンが少なく、不倫故の逃避行。女性同士じゃなくても許されないかもしれないが、だからこそ糾弾された。なんだろう、弱い。

でも全てが美しくて、切なくて、呪わしかった。
ふたりはあの後一言でも言葉を交わしたのか、わからない。でも叶うならキャロルにはもっと弱さを前面に出したひとりの女性としての言葉を吐いてほしいし、テレーズにはもっと優しい意味を込めた「No」を言ってほしい。

最後に。
全てを捨ててふたりで旅行に行けたのは何よりもの愛情表現だったのではないかと思った。人間は人間を気に病むのをやめて、初めて人間として愛を知るのかもしれない。
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