リッキー

キャロルのリッキーのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
4.3
866本目。
先日鑑賞した「エリザベス」で見事な王妃役を演じたケイト・ブランシェットの他の作品も気になり,この作品を鑑賞しました。全く予備知識がないまま鑑賞したため,内容に驚愕しましたが良い作品に巡り合うことができました。

1950年のニューヨークを舞台にしているが,豊かなアメリカの街並みが描かれていて,やわらかな配色が実に美しいです。冒頭から心を奪われます。
物語はテレーズ(ルーニー・マーラ)の視点で描かれており,全体的に台詞が少なめです。

クリスマス前のある日,ブロンドヘアに真っ赤な口紅,ミンクの毛皮を着こなしている豪華な貴婦人キャロルがデパートのおもちゃ売り場にヒョンと現れたら,誰でも見とれてしまいます。そこで接客したのがテレーズで,それが二人の出会いとなります。
語らずとも瞳や繊細な手の仕草で心理状況を表現している演技はさすがケイト・ブランシェットです。
ルーニー・マーラの存在は初めて知りましたが,オードリー・ヘプバーンと被るような印象をうけました。まさしく舞い降りた天使のようです。

この映画では「煙草」が上手く心理状態を投影させています。
最近では禁煙ブームの影響か,映画やTVドラマでも極端に登場シーンが少なくなったように感じますが,煙草は小道具として便利なアイテムです。
ライターでの火のつけ方,煙草の吸い方,煙を吐く仕草,煙草の持ち方で喜び・楽しみ,悲しみ,怒り・怨み,不安・恐怖,リラックス・緊張など心理模様がわかります。

現代では同性愛者にも市民権が認められてきましたが,当時のアメリカは非常に風当りが強かったと思われます。同性愛者は精神の病気の一種とされ治療できるとさえ言われていました。そんな時代背景の中堂々と自分を隠さず生きた彼女たちは賞賛に値します。

成熟したキャロルと素朴なテレーズは対照的でそんなタイプだからこそ惹かれあうのでしょうね。小雪が舞う街角でたたずんでいる二人は本当に美しい。

男女の普通の恋愛映画は苦手ですが,このような美しく切ない愛の物語は芸術を感じ,この作品は至極の恋愛映画です。
リッキー

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