とーーこ

キャロルのとーーこのネタバレレビュー・内容・結末

キャロル(2015年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

はじめに。とても美しい映画だった。好き。
その上で…

登場した瞬間に画面を支配するほどの魅力を発散するキャロル(ケイト・ブランシェット)が何故テレーズという小娘にそこまで惹かれたのか、少々引っかかりを覚えつつ観ていたのだが、そもそもキャロルは◯◯の妻、◯◯の母、◯◯家の嫁という何者でもない存在、籠の中の鳥だ。そんな彼女が、まっすぐな眼差しを持つ若く美しいテレーズに出逢い恋に落ち、籠を飛び出して自分らしく生きようとする。しかしケイト・ブランシェットの圧倒的なまでの存在感に気圧され、彼女なら「私は私よ。自由に生きるわ」とひとこと言えばそれで周りを黙らせてしまいそうな気がしてしまい、ついついなんでキャロルほどの女性がテレーズに…と思ってしまったのだ。
それにテレーズは綺麗なだけの娘ではない。「自分が何を求めているのかわからないのにYESと言ってしまう」などというあまりに正直で残酷な台詞をキャロルに放つのだ。関係を持つことによってテレーズに比べキャロルが失うものは大きすぎるというのに。未だ恐れや絶望を知らぬ若さはこわい。
そんなことを感じつつ、後半、親権を巡る調停でのキャロルの台詞に胸をがっしり掴まれて泣いた。彼女の夫は本来決して酷い男ではない。彼は彼なりに彼女を愛していた。ただ彼は型にはまった生き方愛し方しかできないだけで。そして彼女もまた、ただ自分に正直に生きようとしただけだ。彼らはそれぞれもっと幸せになれたはずだ。それなのに何故、これほど傷つけ合わねばならないのか。

同性愛が許されなかった時代、自分の思うままに愛する人を愛し抜こうとしたふたりの女性の物語、とまとめるにはあまりにケイト・ブランシェットが強烈過ぎた。良くも悪くも、彼女がストーリーもテーマもすべて飲み込んでしまった。
ヘインズ監督ならではのクラシカルで美しい映像による、ケイト・ブランシェット無双。