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キャロルのBeSiのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
4.8
3回目の鑑賞。パルム・ドールを受賞した「アデル、ブルーは熱い色」と対照的な今作。「ドラゴン・タトゥーの女」「her/世界でひとつの彼女」のルーニー・マーラ、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」「ホビット」のケイト・ブランシェットのダブル主演で、女2人の純愛物語を描く。初めて観た時、何回心の中で美しいと思っただろうか。女性的で熟年と言える年齢だが、物わかりのいい成熟さは無く、情熱的で自由奔放なキャロル。若くして何かを探し求める率直な気持ちと戸惑い、健気さから感じ取れるボーイッシュな雰囲気で、オードリー・ヘップバーンの面影を感じずにはいられないテレーズ。どちらも異なる美しさを兼ね備えていて、この2人の愛溢れるモーテルでの場面には目を奪われた。また、キャロルの人生の悲惨さの描写は鮮明だが露骨すぎず味わい深いものがあった。
16ミリで撮影された映像、魅惑的なファッション性、感情表現が為された音楽の数々、それら全ての緻密な表現は素晴らしいものであり、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラの完璧な演技がその素晴らしさをより一層掻き立てる。音と映像が織り成すドラマ。最新の映像体験とは全く真逆な描写の構成こそが本来の映画の魅力であり、この映画はその魅力の真髄を見事に捉え、ひとつの芸術作品として成立させている。観る者の心に染みる傑作。美しい......。
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